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It's
【ラブコメ 官能小説】

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△△△△-4

頭が痛過ぎて目が覚めた。
陽向は拍動性の頭痛を抑えるために、隣で眠る湊の肩に頭を押し当てた。
今まで感じたことのない痛みだ。
「んっ…」
湊が眠そうな声で「どした?」と呟く。
「あたま…いたい…」
「寝れなかった?」
「そーじゃない…」
陽向は湊にしがみついて「いたい…」とだけ言った。
「大丈夫かよマジで」
「ね、今日飛行機何時だっけ?」
「15時。チェックアウト遅らせてもらお。少し休んどけよ」
「うん…」
陽向は布団の中でうずくまって、迫り来る頭痛に耐えていた。
頭が破壊されそうだ。
2時間くらいした頃、頭痛が少し良くなってきたので活動を開始した。
ノロノロと準備を終える。
化粧をするが、なんだかノリが悪い。
頭がぼーっとしてきた。
「陽向?」
「えっ?」
「何ぼーっとしてんの?まだ頭痛い?」
「へーき。寝たからちょっと良くなった」
「そ」
飛行機に間に合うようにチェックアウトし、バスで空港へ向かう。
遅目の昼食を摂りにレストランへ入るが全然食欲がわかない。
その時やっと気づいた。
ものすごく具合が悪い。
でも心配されたくなかったので、食べたくもないグラタンを注文し、無理矢理胃に押し込んだ。
搭乗の時間になり飛行機に乗り込みじっとしていると、だんだんと寒気に襲われてきた。
動きたくないのに、勝手に身体が震え出す。
「おい、具合悪いんじゃねーの?」
「え…?…あ、大丈夫」
「大丈夫じゃねーだろ、それ」
会話するのも億劫だ。
喋る度にさっき食べたグラタンが胃から逆流しそうになる。
キャビンアテンダントが「いかがですか?」と持ってきた毛布を2枚、遠慮なく受け取る。
あまりにも口数が少ないので湊が気にかけ何かを言うが、全然頭に入ってこない。
間もなく離陸となる。
身体がフワッとなる度にまた吐きそうになる。
陽向はこの意味不明な身体の変化についていくのに必死だった。
終始ぼーっとしてしまう。
「寒い」と言って奪った湊のコート、自分のコート、毛布2枚を身体に纏っていたらだんだんポカポカしてきた。
「ひな、大丈夫か?コーヒー飲む?」
覗き込む湊の顔がみるみるうちに真剣になっていく。
「…いらない」
小声で呟いた時、「お前、相当具合悪いだろ」と言って湊は陽向のおでこに手を当てた。
「めちゃくちゃ熱あんじゃん。何で言わねーんだよバカ」
「ん…」
湊の声が遠い。
突然、ぐわんぐわんと酔ったような感覚に襲われる。
「気持ち…悪い…」
「え」
陽向は朦朧とする意識の中、立ち上がってトイレに駆け込んだ。
「お客様ー!シートベルト……」
キャビンアテンダントの注意を無視してトイレに閉じこもる。
ものすごい勢いでトイレに吐くと、少し楽になった。
ゴホゴホとむせる。
あー…頭痛い……。
すぐ後ろで、ドスドスとドアを叩く音がする。
「おい!開けろ!」
「お客様ー!」
「陽向!」
「席に着いて下さい!」
吐き気と頭痛でそれどころではない。
陽向はしばらく動けなかった。
ようやく頭が冴えてきた頃トイレのドアを開けると、外には湊とキャビンアテンダント2人が立っていた。
「お客様?!大丈夫ですか?」
「あ…ごめんなさい…」
「すみません…。お水、もらえますか?」
湊に支えられながら席まで戻る。
他の客にじろじろ見られているが、そんなのどうでもいい。
シートベルトを閉めてまた毛布とコートにくるまると、ありえないほどの睡魔に襲われた。
「ひな、水もらったよ。飲む?」
「のむ…」
少し飲むと、胃が落ち着いた。
あー…気持ち悪い…。
なんだこれ…。

知らぬ間に眠っていた。
気付いた時には周りの客はほとんど降りてしまっていた。
「着いたぞ」
フラフラしながら飛行機から降りる。
「ありがとうございました」
「すみませんでした…」
荷物を受け取りに行くが、立っていられなくて、陽向は近くの椅子でガタガタ震えていた。
また、頭痛が襲ってくる。
こんなんで電車で帰ると言われたら死んでしまう。
そしたら空港で一夜を過ごすのか…いや、それだけは避けたい。
悪い妄想ばかりしていたら湊がスーツケースを2つ持って戻ってきた。
「マーが迎えに来てくれるって。あと1時間頑張れるか?」
「うん…」
湊は陽向の頭を撫でて隣に腰を下ろした。

雅紀が来たのはずいぶん経ってからだった。
帰宅ラッシュで相当道が混んでいたらしい。
「おう、悪いね」
「いーえ、いーえー。風間、大丈夫?」
「うん…」
雅紀が荷物を持ってくれて、外まで歩く。
そこからの記憶はなかった。
気付いたら自分の部屋で眠っていた。
「39.5℃って…お前、昨日あんな寒いとこで薄着でぼーっとしてっからだよ」
起きた途端に怒られる。
具合悪い時の説教ほど辛いものはない。
「ん…」
湊はため息をつくと、「これ飲んで今日は寝な」と風邪薬を差し出した。
黙ってそれを飲む。
「解放されて、安心したんかね」
湊の優しい声を聞きながら、陽向は深い眠りに落ちた。


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