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It's
【ラブコメ 官能小説】

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△△△△-5

翌朝、身体がものすごく熱い事に気付いた。
ベッド脇のサイドテーブルに出しっ放しの体温計で熱を測る。
39.5℃。
昨日のままのを使ってしまってバカだな自分、と思いもう一度リセットして測り直す。
39.7℃。
薬飲んで寝たはずなのに、熱が下がっていない。
身体を起こす。
ありえないくらい重い。
ベッドの下で布団を敷いて寝ている湊が寝ぼけ眼でこちらを見る。
「大丈夫か?」
「熱…下がんない」
「何度?」
体温計を渡す。
「え、マジで?病院行こう」
湊は一回家まで戻り車を持ってきて、近くの病院まで走らせた。
陽向はぐったりしたまま肩で息をしていた。
受け付けを済ませて待っていると、湊がポカリを買ってくれた。
「ありがと」
「辛くない?へーき?」
「うん、へーき…」
そんなに混んでおらず、わりと早く呼ばれた。
採血をし、診察にうつる。
「炎症データ的には問題ないんだけどね…。ノドは?痛くない?」
そういえばノドは痛くない。
頭痛と吐き気だけだ。
それを伝えると、ベッドに寝かされなんやかんやとやられる。
首を持ち上げられた時、筋肉痛のような痛みに襲われた。
「風邪かねぇ?解熱剤出しとくから、1日3回飲んでね」
そう言われ、その日は解熱剤だけもらって帰ることになった。

家に帰ってからはずっとソファーに横になっていた。
解熱剤を飲んでからは身体が楽になりご飯を食べ、無理矢理お風呂に入る事ができたが、効果が切れるとまた激しい悪寒に襲われ、38℃台まで熱が跳ね上がる。
さっきまで笑いながら話していたかと思えば、またぐったりするを繰り返している。
「また熱出てきた?」
「そーみたい…」
「明日、俺夕方までバイトだけど、終わったら来るから」
湊はそう言うと、ベッドの横にまた布団を敷いて寝ようとした。
「帰りなよ…明日朝からバイトなんでしょ?」
「そんな熱出してんのに帰れるわけねーだろ」
「でも…」
湊はおもむろに立ち上がると、部屋から出て行った。
しばらくして戻ってくると、虚ろな目をした陽向のおでこに冷えピタを貼った。
「冷たっ」
「気持ちいだろ?」
コクっと頷くと、湊は「おでこ狭すぎ。冷えピタはみ出てる」とクスクス笑った。
「うるさいなー…」
「早く熱下がるといーな」
「うん」
ニコッと笑うと、湊は陽向の頭を優しく撫でた。
「頭痛いの治った?」
「治らない」
「痛いの痛いの飛んでけー」
「バカにしてるでしょ」
「お前見るとやりたくなる」
「なんかむかつく」
こんな小競り合いをしてるだけでも、まだ元気だなと思う。
明日になれば少しは良くなるだろうか。

朝起きてすぐに熱を測るのが日課になった。
今日は土曜日だ。
カレンダーを見ながら体温計が鳴るのを待つ。
ーーーピピピピ
39.2℃。
またか…と思う。
毎朝起きると全身が汗だくで、夏の朝のようにパジャマがぐしょぐしょになっている。
「あたま痛……」
痛過ぎて無意識に呟いてしまう。
「…あ?」
湊が起きた。
寝癖のおっ立った髪をぐしゃっとかき上げて、陽向の真っ赤な顔を見る。
「湊…」
「どした?」
「熱下がんない…頭痛い…」
陽向はフラフラとベッドから降りると、湊に抱きついた。
優しく背中をさすってくれる。
「水飲みな。汗すげーぞ」
「んー…」
少し動いただけなのに心臓がバクバクいっている。
この2日間でものすごく体力を消耗した気がする。
このままでは発作を起こしてしまいそうだ。
「あーっ……」
「ほれ」
湊は陽向をその場に寝かせると、冷蔵庫から麦茶を持ってきてくれた。
それをゴクゴクと飲む。
相当喉が渇いていたみたいだ。
それはそうか。
こんなに汗だくなのだから。
ふぅと息をついてまた横になる。
湊が髪を撫でてくれる。
「どーしちゃったんだよ、マジで…」
「ん…」
あたしだって知りたいよ…と思う。
「俺そろそろバイト行くけど、大丈夫?」
「大丈夫…」
「とりあえずお粥作っとくから」
「…ありがと」
湊がキッチンに向かう。
陽向も後を追いかけてリビングのソファーに寝転ぶ。
湊が途中で持ってきてくれたアイスノンを抱きしめて目を閉じる。
頭が痛い。
ズキズキなんてもんじゃない。
ガンガンする。
少し経ってから湊がテーブルにコトン、とお粥がよそられた器を置いた。
「陽向、食いな。栄養とらねーと良くなるもんも良くなんねーぞ」
湊に優しく抱き起こされ、眠気と熱で怠い身体をそのまま預ける。
湊が「ほれ」と口までスプーンを持ってきてくれ、それを口で受け取る。
ほのかに塩の味が口の中に広がる。
初めて湊の家に行った時、こういう風に熱を出した。
そして、お粥を作ってくれた。
あの時と同じように、心が満たされる。
「おいひー…」
「そりゃよかった」
「湊…」
「ん?」
「…ごめんね」
「なんで謝んだよ」
「だって…いつも迷惑ばっかかけて……困らせて…」
陽向が言うと、湊は「なんだよいきなり」と笑った。
「でも、そんなことよりお前の身体が心配。すげー病弱だよな」
「今までは元気だったのに、今年になってから喘息もひどくなったし、よく風邪引くよーになった。なんだろな…」
「初詣は健康祈願だな」
「そーだね」
2人でヘラヘラ笑い合う。
湊に優しく抱きしめられる。
「風邪…うつるよ」
「うつんねーよ。つーか今さらだし」
「んもー…」
湊は笑うと、陽向のおでこに軽くキスをした。
「そんじゃそろそろ行くわ…。先寝てろよ」
「早く帰ってきてね」
「あいよ」
コートを羽織り、帽子を被った湊を玄関まで見送りに行く。
湊が玄関から出て行く。
陽向はリビングに戻って残りのお粥を食べ始めた。


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