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クラスメイトはスナイパー
【コメディ その他小説】

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クラスメイトはスナイパー〜鳥カゴの鳥〜-1

東京の濁った空。
その空を一機の巨大なる航空機が大きな円形を描く様に航空している。

人の出入りをなくしたショッピングモールにある電気量販店のテレビが誰に語るでもなく、音声を流し続けている。
「東京、及び東京近郊に緊急避難命令が発令されました。まだ避難されていない方、またはこの放送をご覧になった方は早急に避難して下さい。繰り返します……」
同じ台詞を延々と何十回も語るテレビの中のニュースキャスターを見て、男は滑稽さに笑った。
「見てご覧、ウグイ。政府の馬鹿共もやっと気付いたみたいだね」
男は不気味な笑みを言葉と共に後方の開いたドアの前に立つウグイに向けた。
まだ弾む呼吸を整えながらも自身を睨みつけるウグイを見て男は目を細める。
「走って……来たのかな?息がきれてるよ」
―――鳥カゴの中の鳥は自由にはなれないし、一人じゃ空も飛べない。
いつしか男が言った言葉がウグイの頭をよぎった。
漆黒のワンピースを捲り上げ、右股に締め付けたホルダーから男を止める事が出来る唯一無二の道具を取り出したウグイは、それを男に向ける。
ウグイが見つめる視線の先にいる男は大きめのレザーのソファにどっかりと腰をかけていた。
右手には鞘に納められた長い日本刀……男の周りには黒いスーツに身を包んだ首や手足を無くした肉の塊が無造作にごろん、と転がっている。
ウグイはその肉の塊が物語る男の力と戦慄に驚愕し、唾を呑んだ。
「……この人達かい?僕がここに座っていたら急に入って来て僕を殺そうとしたんだ」
転がっている死体を見回した男はクスリと笑い、続いてウグイに視線を戻す。
「ちょうど、ほら……今キミが僕に銃を向けてるみたいに」
男の言葉は今までとは違い酷い強みと歪み、そして異怖が含まれていた。
―――もう一つ、表情から醸し出される並々ならぬ殺意をウグイは感じた。
突発的に……いや体が男を恐れているのか、ウグイの体が後ずさる。
その僅かな隙を男は見逃さない、大地を蹴り上げ体勢を丸めると一気にウグイとの距離を縮めた。
「くっ!」
ワープしたかの様な男のスピードで自身の懐に潜りこまれたウグイは銃のトリガーを引く。
ドゥン……。
銃声と同時に銃口が宙に浮かんだ。
鞘から引き抜かれた刀による抜刀が銃口を切り裂いたのだ。息をつく暇もなく、抜刀から繋ぐ男が繰り出す『突き』がウグイの左胸を狙う。
ウグイは即座に後方に一歩飛び、続いて上半身を左に捻った。標的を見失った男の鋭く研がれた刀は空間をバッサリと切り裂く。
胸をかすめた刀を確認した後、刀に沿って滑走する様にウグイは右肩を要に男の懐に潜りこむ。
銃を失った今、ウグイに残された戦闘手段は肉弾戦以外ない。
「はぁぁっ」
左の拳を握りしめ力を入れた後その拳を解き放ち、ウグイはがら空きの男のみぞおちに掌ていを放った。
しかし、男の表情に焦りはない。
みぞおちを狙うウグイの手首を左手で掴み上げ、刀をその場に落とすと、あいた右手で細く白い首を握り締め壁に叩きつけた。
「あぅっ」
ウグイから声が漏れる。
男はウグイの首を掴み、壁に叩きつけたまま優しい表情をウグイに向けた。
「それじゃあ僕は止められないよ……ウグイ」
苦痛と呼吸が満足にできない状態に顔を歪めるウグイ。
それを見て男は首を捻りながら、そっとウグイの絹の糸の様な紅髪に優しく手を通した。
そして、その手をゆっくりと降ろしていき柔らかなウグイの頬に手をあてる。


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