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曼珠沙華
【SM 官能小説】

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(前編)-9

私の目の前で、女の裸体が淡い光の粒をまとったように妖艶に浮かび上がり、女の素肌の甘美
な匂いがむせるように私に纏わりついてきた。自分の中の渇きがひたひたと癒される痺れに、
私は生唾を咽喉の奥深く呑み込んだ。


あの公園で見た息苦しい色気を漂わせたうなじ、蒼白い光で縁取られた首筋から肩、そして、
白いブラウスの下に思い描いたふくよかな乳房は、縛った縄のあいだから零れるような柔肉を
蕩けさせ、痛々しくもありながら同時に蠱惑的な情感さえ滲ませていた。


薄い脂がほんのりとのった腹部は、ゆるやかな起状を描きながらも、繊細にくびれた腰廻りと
ねっとりとした肉づきの臀部へと続いている。小さな貝のような臍からさらに恥丘へ視線を這
わせると、そこには、おののき震えるようなふわりと盛り上がった淡い陰毛を覗かせていた。

それは濃くもなく、薄くもなく、まるで媚びるように生えあがった繊毛だった。そして、すり
合わせた腿の付け根からは、あの公園で見た魅惑的な脚の線が細い足首へとすらりと伸びきっ
ていた。


私は、女のからだから伸びた糸に引かれるように、よろよろと彼女の傍に腰を降ろす。

呪縛されたように硬直した自分の裸体を恐る恐る彼女のからだに寄り添わせると、熟れた女の
肌の体温が私の体に纏わりついてくる。

白いうなじに絡まる黒い髪に鼻をあてるといい匂いがする。どこか懐かしい匂いだ。やわらか
い耳たぶを唇で啄み、わずかに白い歯をのぞかせた薄く開いた唇を指でなぞる。微かにぬくも
りを含んだ女の吐息が私の指を湿らせる。それだけで私の渇いた部分に淡い疼きが湧いてくる。

もう何十年もしぼみ、衰えていたものが、私の中で目を覚ましたように光を放ち始めているよ
うな気がした。


女の傍に添い寝をした私は、彼女のからだをしげしげと見つめながら、今にも蕩けそうな女の
肌に指を触れる。しなやかな首筋から薄く浮き上がった鎖骨の翳りに指を這わせると、痺れる
ようなしっとりとした肌ざわりが指に伝わってくる。

縄に喰い緊められたふくよかな乳房の隆起の翳りをなぞり、薄く窪んだ鳩尾からゆるやかな
起状を描いた下腹部の肌の湿り気を指に含ませる。雪白の肌はやがてうっすらとした茂みに
覆われる。そこで私の指がふと止まる。これが女盛りの熟れた繊毛というものなのか…あまり
の妖艶さに私はごくりと生唾を深く呑みこんだ。


ふと死んだ妻が私の中のどこかで笑ったような気がした…まだ、そこには触れないで…足指を
舐めて欲しいのよ…どこからか妻の声が聞こえた。


私は禁欲的に生えあがった茂みをかき分けることなく、まるで妻の幻影に背中を押されるよう
に女の真っ白なふくらはぎに頬を寄せると頬ずりをする。柔らかい肉肌の甘い恍惚感が頬に伝
わってくる。

さらに足首から爪先にかけて愛おしく唇を這わせ、足の甲と裏側に唇を押しつけていく。

舌先でチロチロと足指のあいだをつつき、艶々とした薄桃色の爪をした彼女の足指の輪郭を舌
でなぞりながら、足指のひとつを唇に含んだ。口の中に止めどもなく溢れてくる唾液を絡め、
貪るようにしゃぶり始めた。



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