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曼珠沙華
【SM 官能小説】

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(前編)-1

「…褪せた扉を開けると、薄灯りに包まれた部屋で女が眠っている…。女は、なにひとつ身に
つけてはいなかった。蒼白い肌をした裸の女は薬で眠らされているようだ。それも前後不覚の
昏睡におちいっているらしい…。そして、目覚めない女の傍で、わたしはこれから添い寝を
して一夜をすごそうとしている…」



入所している老人ホームがすっかり寝静まり、夜も更け始めた頃、私は老眼鏡を外し、読みか
けていた古い本をベッドの枕元のテーブルに置くと疲れた目をいたわるように灯りを消した。

昔の友人から借りた色褪せた本は、著名な作家K…が書いた「眠れる美女」という本だった。
本の中だけの架空の話だと思っていたら、その友人は、眠った裸の女の傍で、添い寝をしなが
ら一夜を過ごせる旅館がこの老人ホームの近くにあるという。

ほんとうにそんな旅館があるのなら、一週間前に公園で出会ったあの女とその旅館でふたたび
会い、からだを寄せ合うことができたらと、ふと私はかなわぬ思いをめぐらせていた。


ほんのりとあの女の姿が瞼の裏に浮かんでくる…。

あの日、公園の曼珠沙華の花の中に彼女を見たとき、七十二歳の老いた自分の中にも、まだ性
の疼きというものが残っていたことを仄かに感じることができた。そして、二十数年前、妻が
死んだあの日も、私は曼珠沙華の花を見ていたような気がする。


老人ホームの近くの海の音が、なぜか自分の荒涼とした心の奥を駆け抜け、耳の中でもの悲し
く木霊する。

やがて私は、渚に打ち寄せる遠い潮騒の音に誘われるように深い眠りに堕ちていった…。



あの女の蒼白い裸体が、狂ったように咲き乱れる紅色の曼珠沙華の花に覆われている…。
女は眠っているのか、薄く眼を閉じていた。群がる花弁のあいだに、なだらかな稜線を描いた
女の乳房と腹、そして真っ白な腿が淡く浮き上がっている。

私は、女のなだらかな隆起を描いた白い胸にそっと指を触れる。

淡く色づいた乳首の上を瑠璃色の秋風がゆるやかに旋回している。その乳首に私の唇から零れ
た懐かしい時空のかけらを含んだ涎が滴ると、乳首の先端が小刻みに震え、白い乳房全体が
ぷるぷると跳躍を始める。柔らかな乳房が蕩けるように私が滴らせた涎の中で戯れ、まるで
抱いた赤子のように私の欲情の中から翔びたとうとしていた。


女の乳首から漂う芳香な匂いを胸いっぱい吸い込む…。その匂いが私の胸の内をくすぐり、
やがてからだの隅々までやすらげてくれる。

私と女は、曼珠沙華の花に包まれ、微睡むような性の野辺にからだを寄せ合い、同じ夢を見る
ように溶け合っていく。

女の太腿の付け根が蝶の羽のようにゆるやかに開く。薄墨色の陰毛は、色濃い匂いを漂わせ、
蝶の鱗粉のような艶やかな光沢を放ちながら閉じた肉の割れ目を仄かに覆っている。

まるでゆったりと押し寄せる波のような女の情感が、老いすぎた私に瑞々しく迫ってくる。

小さな光を含んだ膣孔は、まるでノスタルジアの淡い風に晒されるようにひっそりと息を潜め、
肉洞の奥深く差し込む灯りは、肉襞の表面を砕いた水晶のような光でまぶし、淫蕩のぬかるみ
をてらてらと輝かせていた。


そのとき不意に現れた翳りは、私のペニスだったのだろうか…。



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