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愛の手紙
【その他 官能小説】

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愛の手紙-2

 意識しながら、しかも何事もなく装ってぶらぶらするのは意外と疲れるものである。きょろきょろ他人の顔を見るのも変だし、煙草を喫いながら立ち尽くしていてもすぐに居たたまれなくなってしまう。その間、いつ女の視線が自分に注がれるかわからないので常に目を配っていなければならない。ごく近くの周囲から少し離れた雑踏まで注意を向ける。これは苦痛であった。上杉は三日でばかばかしくなってしまった。

 アルバムには該当するイニシャルが五人いた。
同級生では渡辺友香。無口で大柄な女で喋った記憶はない。だが彼女はちがう。バスケット部だったから毎日体育館で練習があったはずだ。教室からグラウンドを眺めることなど出来ない。
 別のクラスに渡来登美子と若林多恵という二人がいたが、卓球部だったから同じ理由であり得ない。クラブごとの写真も載っているので所属はすぐにわかる。
 和田妙子。顔に見覚えすらない。見たところどこの部にもいないようだった。取り立てて特徴もなく、地味な印象の顔である。きっと大人しい子だったのだろう。
 苗字と名を逆にした場合のW・Tはたった一人。高城和歌子という才媛で、学内で知らない者はいなかった。特に英語力は群を抜いていて、たしかアメリカの大学へ行くと聞いていたから、きっとエリートコースに乗って活躍しているにちがいない。こんな地方の町でくすぶっているとは思えない。そうすると、
(和田妙子?……)
そこまで考えて、同学年とは限らないと思い当たった。下級生かもしれない。そうだったらどうしようもない。……

 アルバムを調べた結果がそんな具合だったから余計に気持ちが失せてしまった。
それでもさらに数日、退社後の一時間ほどうろついてみたが、それらしい女と出会うこともなく、ある日職場の仲間に飲みに誘われたのを切っ掛けに止めてしまった。


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