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『graduation』
【青春 恋愛小説】

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『graduation〜ファイティングガール〜』-1

私の先輩は今日、卒業する。

1年ちょっと前だったかな。
都築先輩に想い人がいるという噂が流れた時、私はショックを受けるよりも「そりゃそうですよね」という気持ちになった。

都築先輩は2年生の時に入ったゼミの1つ上の先輩で、ディスカッションをやらせても、プレゼンをやらせても、他の人とは一味違った視点で、優等生というわけではなかったけれど、先生も一目置いているようだった。
当然、憧れている下級生もかなりいた。

私も気が付いたときには、もう都築先輩の虜だった。
理由なんてない。本当に好きな物に理由なんてつけられるはずがない。

ただ好きで、いつだって目で追っていた。
都築先輩がよくいるからという理由だけで、図書館にもよく通うようになった。
少しでも近づきたい。
少しでも見ていたい。
少しでも追いつきたい。

すれ違ってお辞儀をする瞬間だけで、その日一日幸せな気分になれた。

ただ都築先輩は秘密主義で自分のことをあまり喋らない為、彼女がいるのかどうかよく分からなかった。

一緒に行動している同級生の『真田雪見』という女の人がいるらしいが、彼女には常に彼氏がいるため、都築先輩の彼女ではないというのが通説だった。

他校に彼女がいるという噂もすぐに消えた。
彼は、学校にいる時間が他の生徒と比べてかなり長いほうだったから。

なにやら塾講師のバイトもしているようだし、とても他校の彼女と会っている時間はなさそう。

モテそうな先輩が大学で彼女を作っていない
+告白だってちょこちょこされているのに断っているみたい
=想い人がいるのだろう

という図式は簡単に成立した。

「亜紀、大丈夫?きっとそんな噂またデマだよ」

都築先輩の「想い人存在説」が出たのを心配して、親友の可南子がわざわざ電話してきた。

「平気。」

強がりでなく、私は平気だった。
だってその「想い人」と付き合ってないじゃん、都築先輩。

この歳になったら、ステキな男の人に全く女の影がないなんてことは考えられない。
結婚していないどころか、付き合ってさえいない女の影にビビって何もできないなんて馬鹿みたい。

「私、戦うし。」

宣言するように可南子に言った。

「・・・・・・亜紀なら勝つよ。」

可南子は笑いもせずにそう言った。


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