回想する優子-1
【回想する優子】
マスターが言い当てたように、乗車した時に見せた表情の優子の沈痛な表情には理由があり、優子は少し悩んでいたのだ。
中高一貫で女学校に通っていた優子は、大学に入ってから初めて彼氏ができた。よくある友人に無理矢理誘われたコンパで出会った男だ。
祐治と言う名のその男は中身の無い男で、そんなに惹かれたという訳では無かったが、カップルばかりの廻りの環境が優子を焦らせていたのだろう。
「えええっ!優子ってまだやったことが無いの!じゃあ明日のコンパがチャンスよ。やっちゃえやっちゃえ!」
コンパに誘った友人の言葉が脳裏を過り、軽いノリで誘われるままお持ち帰りをされて、その日の内に処女を奪われてしまった。
それはいい。よくあることだ。今問題にしているのは優子の悩みのことだ。
優子を悩ませているのは女子高時代に見聞きしたことに起因する。
アイドルのことや勉強などの話題は当然ながら、やはり十代の一番の関心事は男女を問わず性に関することだろう。
そしてその話題をするにしても、男の居ない閉鎖された女社会には遠慮が無い。
「はあ、疲れたあ」
「何言ってんのよ。まだ月曜日の朝よ」
「昨日、激しくてクタクタなのよ」
「激しい?一体何の話?」
「やあね、もちろんセックスじゃないのよ。もう野獣よ野獣。激しいセックスでイキまくり。ああん、まだまんこにチンチンが入ってる感じがするう」
女子高時代の友人は優子の前で遠慮なくスカートをまくり、下着の上から股間を押さえて身を捩る真似をした。
こんな感じで経験のある友人たちの過大な体験談や、日々持ち込まれる女性紙に目を通し続ける内に、優子はセックスに凄く幻想を抱くようになった。卒業する頃には女性紙に『絶頂』や『オーガスム』と言う単語が載っているのを見ると、貪るように読むまでになっていた。
(イクってどんな感じだろう)
しかし、女子高時代の優子は男に縁が無く、耳年増のまま貴重な青春時代を過ごしてしまった。
セックスに過大なる期待を持ちながら、遂に迎えた初体験はただただ痛いだけだった。
回数をこなせば気持ちよくなると聞いていたので、この1月間、ほぼ毎日誘われるままセックスをしていたのだが、祐治は自分の快楽にしか関心を示さず、いつもフェラチオを強要されるばかりで、ろくに愛撫もされずに直ぐに挿入されてしまい、快楽とは程遠い行為を毎回繰り返されていたのだった。
自分が変なのか、相手が下手なのかは優子にはわからなかった。
友人に相談も出来ずに悶々とし、今日こそはと思って門限ギリギリまで時間を掛けたが、結局2回戦目の準備ためのフェラチオの奉仕時間が長くなっただけだった。
(わたしもイきたいのに…)
これが優子の沈痛の表情の原因で、マスターが指摘した悩みの全てだったが、優子自身が理解していない優子の本質がこの悩みに起因していたのだった。そう、優子の本質はとても淫乱だったのだ。
優子が彼氏のセックスを思い出して顔をしかめたが、股間に走った快感に現実に戻った。