天ヶ瀬若菜のAV撮影 第3話-1
昼過ぎ、ショット・バー『野麦峠』のドアを開ける。
ドアを開ると、聞き覚えのある声が聞こえた。
「あ、やっぱ来てくれたんだ!こっちおいで!」
カウンターの右端に、里島響子さんがいる。カウンターの中にいるマスターの野麦さんとなにやら話していたようだが、私を見つけるとすぐに手招きして私を呼ぶ。
なぜ響子さんがここにいるのかわからない。しかし、私を手招きして呼んでいるのだから、なにか私に言いたいことはあるのだろう。ともかく、私は響子さんの隣に座った。
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「あはは、来てくれたんだ!」
響子さんはニコニコな笑顔で、私の肩をバンバンと叩く。
「あの…、今回は撮影の見学に…。でも、なんで響子さんが??」
「ああ、あのね、今回、私が撮影するの。ビデオの撮影なんかもしてるのよ、私。」
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ここで例のアルバイトの話を聞いてから、私はずっと色々悩んでいた。
とにかく何をされるかわからない。これが私の一番の不安だった。
それで、野麦さんに一度撮影を見学させて欲しいと頼んだのだ。ダメだと言われるのがオチだろうと思ったのだが、意外にも見学させてくれることになった。
「ああ、うん。とりあえず撮影のことなんだけど、ともかく私の指示に従ってね。それと静かに見学すること。それだけかな。」
「ああ、はい。わかりました。」
しばらく響子さんと話をしていた。しばらくしてマスターはカウンターの奥にあるキッチンらしき場所に消えていった。
私と響子さんのふたりきりでしばらくいると、突然ガランガランと店の扉が開いて、女の子が店の中に入ってきた。
中学生くらいの女の子だろうか、色白で目が大きく、整った顔立ちで、容姿は可愛らしい美少女そのもの。
長い黒髪をツインテールに結い、黒と白のストライプ柄の膝まであるオーバーニーソックス、ギリギリ太もも裾が届く程度の短いジーンズ、派手なピンク生地のTシャツ……
その女の子の外見と服装はわざとらしく子供っぽさを強調しているような、そんな感じだった。
「そうだ!この人が今回の撮影を見学することになった、名前は……。」
「えっと、沙樹と言います。よろしくお願いします。」
私は軽く会釈しながら言った。
「はい、響子さんから聞いてます。私は天ヶ瀬若菜と言います。今回はよろしくお願いします!」
若菜ちゃんはハキハキと私に挨拶して、深々とお辞儀をした。私もつられて座ったままお辞儀をする。
「若菜ちゃん、早速だけど準備してきて!」
「はい、わかりました!それじゃ、失礼します!」
若菜ちゃんはそう言うと、カウンターの中に入り、タッタッと足音をさせながらあっという間にカウンターの奥へと消えていった。
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「あの子さあ、とんでもないヤリマンなのよねえ…。」
「ふへぇ…!?」
「あ、いやね、あの子の場合、趣味でこういう事やってるのよ…。変わってるというか、おかしいというか…。」
「そ、そうなんですか…。えっと、天ヶ瀬さんって年齢は…?」
「そういうのは聞かない約束!じゃ、行きましょう!」
響子さんはそう言って、立ち上がった。私たちもカウンターの中の奥に向かうらしい…。