卒業記念-2
昼休みセンターの食堂で向ヶ丘技師とすれ違ったとき、彼が囁いた。
「もう卒業したみたいだね」
「ええ、まあ」
たとえ他の者に聞かれたとしてもなんのことかわからない短い会話だった。
その日帰ったとき、空想の峰野鐘はさらにリアルになっていた。
『どうして僕の申し出を断ったんだよ、花果』
「お仕事ではそれが禁止されているからよ。無理言わないで鐘」
『今晩良いだろう?』
「ごめん、私……今日疲れているから」
『もう僕のこと卒業する積りなの? ひどいよ』
「無理言わないで、鐘。卒業した後も会えるんだから」
『じゃあ、今日は卒業記念のお祝いをしようよ。良いだろう?』
「しょうがないわね。うふふ。じゃあ先にシャワーを浴びてくるわ」
葦野はその晩空想の中で卒業記念の交わりをした。
峰野とはこれからは長く付き合った友達のような関係になるかなと思い、レプリカをよく洗って大事に引き出しの奥に仕舞いこんだ。