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青影検査センター
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卒業記念-1

葦野は新型レプリカを持ち帰り、その日から使うようにした。

葦野はレプリカに話しかけながら愛撫した。

「あらあら、元気なこと。鐘君、もうこんなになっちゃって。

そうね、それじゃあ、お口でしてあげるね。そうだ。

ハチミツを塗ってしてみようか。ほらじっとして。えっ、冷たいって?

我慢してね。まんべんなく塗ってあげるから。

それじゃあ、舐めるわよ」

こんな調子で話しかけていると、実際に峰野鐘と遊んでいるような気になってくる。

幼い頃から本を読んで過ごした葦野は、こういう空想遊びは得意だった。

空想の世界で峰野鐘に話しかけ、相手にも色々なことを語らせた。

多分実際の峰野だったら、こうは都合よくならないだろうと思うことも、空想の世界では思うままだ。

一緒にお風呂に入って流しっこしたり、そのまま交わったりもした。

たまに喧嘩もしてみた。

葦野が作った料理に素っ気無い感想を言った峰野に食ってかかったりした。

共演女優との噂を問い詰め、ベッドでお仕置きをしたりした。

だが決して彼の持ち物が粗末なことを話題にはしなかった。

顔やスタイルは一流でも持ち物もそうだとは限らない。

そんなものは公衆の面前に曝すことはないし、評価されることもないからだ。

葦野は峰野鐘のそういう格差部分に愛情を感じた。

そういう劣った部分を庇うことで、守ってあげたかった。

そこに自分との繋がりを感じたのだ。

もし持ち物も容貌なみに立派だったら、自分との接点を見出し辛かったかもしれない。

葦野が峰野の核(コア)の部分を十分に楽しみ尽くしていた頃、また本人に再会することになった。

MRIの再検査に訪れたのだ。

葦野は峰野に対する自分の態度の変化に驚いた。

初対面のときには恋心を隠そうと必死に演技していた。

だが今回は峰野に感じているのは長年連れ添った相手への愛に似たものだった。

そういう葦野に接して峰野は混乱したようだ。

多分峰野は前回葦野の恋心を見破っていたに違いない。

それを必死に隠そうとする彼女の様子を見てからかったのだろう。

そこに恋愛における勝ち組の余裕があったと思う。

惚れられた方が圧倒的に強いし相手の心の底までよく見えるのだ。

『看護師さん、随分つっけんどんだね。僕が嫌いなの?』

確かそんなことを言っていじって楽しんでいたのだ。

当然、今回も多少期待していたと思う。

自分にその気がなくても、惚れられているというのは気分の良いものだ。

「再検査ですね。どうぞこちらへ」

葦野は余計なことは一切言わなかった。それは前回と同じである。

だが言語以外の彼女の態度が前回とは全く変っていた。

相手の急所を知り尽くした後の葦野は余裕を持って観察していた。

今度プレイするとき、この観察結果を取り入れてみよう……という風に。

一方峰野は余裕を失った。自分を見てときめいていた看護師が今日は様子が違う。

そして相手の心の中が全く見えない。前はガラス張りのように見えたのに。

けれど恋が冷めたのとも違う。自分に深い関心を持っているようだ。

だがそれがなんなのか全く読めない。

以前は自分自身のことで精一杯で顔を赤くしたり急に無表情を装ったり、峰野に対する配慮などする余裕はなかった。

けれども今は目配せや動作の1つ1つが峰野に対する優しさのような配慮を感じる。

自分は見守られている。だがそれは恋にのぼせた為ではない。全く違う。

何かが違う。峰野は混乱した。そして葦野の本心を知りたいと思った。

葦野は葦野で、そういう峰野鐘の動揺をガラス張りのように見ていた。

MRIの検査室に招き入れる手の動作や顔の表情1つに微妙な変化をつけて、いわゆる『思わせぶり』をしてみる余裕もあった。

葦野は決して美人ではない。まあ、十人並みの顔だろう。

だが、恋愛における勝者は心の余裕がある方であり、相手がよく見える方なのだ。

こうして殆ど言葉をかわさないで案内をする僅かな時間に2人の攻防が行われていた。

そしてその結果は検査が終わった帰り道にわかった。

峰野鐘が多弁になっていた。葦野に質問攻めし始めたのだ。

だが内容は葦野のプライベートに関することばかりなので当然答えてあげることはできない。

申し訳なさそうに答えられないことを謝罪した。

特に携帯の番号を交換する申し出には、正直心が動いたが丁寧に断った。

「もし峰野さんの携帯番号が他の人に知られたら、センターから漏れたという疑いがかかります。

それだけは避けなければいけません。ですから残念ですが交換できません。

ありがとうございます。私のような者に申し出て下さって」

そうやって勝負の判定は下されたのだ。

  


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