様々なこと-8
(あらら……)
こうなってはどうしようもない。僕はパンツを脱ぎ取って、もう一度、風呂場へ向かった。
「ふう……ぐっ……うっ」
自分で自分を慰める──目を閉じて、頭の中に映し出されるのは、沙織さんと激しく愛し合う僕だ。
「ぐっ!ああ……」
脳が痺れ、震えるほどの快感と共に、行為は終わった。
そして僕は必ず、強い嫌悪感に圧し潰されそうになる。
(……こんなことやってちゃ、性少年って言われても仕方ないや)
沙織さんと出逢って四日目。僕はとうとう、妄想の中に思い浮かべた貴女と、愛し合ってしまった。
火曜日の夕方。僕は、一昨日からの寝不足と連日の尋常じゃない暑さから、かなりバテていた。
寝くてたまらないけど、そうもしてられない。どうしても、渚に会う必要があった。
昨日の見舞いで、次は全員で来ると約束したから渚を誘いたいのに、今朝から全くつかまらない。
だったら直接、家に出向いてみようと考え、父に今日も遅くなると理由も含めて伝えた。
すると、父は「拓海。ほどほどにしておけ」と、僕の行動にブレーキを掛けてきた。
「どうしてさ?みんなで見舞いに行くのが悪いことなの」
いら立たしさが一気にこみ上げて来る。思わず反論した。
そんな僕の考えを、父は切り捨てるように言った。
「悪いとは言っていない。友人も、用事があるだろうから、あまり我を通し過ぎるなと言ってるんだ」
どうして、上から押さえつけようとするんだ。
「そんなの解ってるよ!」
「いいや、おまえは友人が何たるかを解っていない」
断定した口ぶりに腹が立つ。
「まったく意味が解んないよ!僕は、友達と一緒におばさんの見舞いに行きたいだけさ」
「その友人も、一人々、自分の考え方を持っている。友人とは各々の考え方を尊重し合うものだ。
ところが、おまえのやってることは、友人の考え方に目を向けようせず、自分の考え方を押しつけてる子供だ」
くそ!──海人や渚が正しい考え方で、僕の考え方は“子供わがまま”だなんて信じられない。
「父さんも海人も渚も、こんな島の風潮が正しいなんて思ってるから、僕を間違いだっていうんだ!」
「拓海、よく聞いておけ……」
父の僕を見つめる目は、哀しそうだった。
「──友人とは常に流動的なもので、付いたり離れたりを何度も繰り返し、緩い繋がりは徐々に淘汰されていくんだ。
そうして、本当に残る友人は 幾らもいない。ところが、おまえは友人が自分から離れていくのが怖くて、必死に繋ぎ止めようとしている」
父の言葉を聞いた途端、僕は自分の血が逆流するような感じがした。