様々なこと-4
「どうってこと無いさ。近い内に渚を連れて行こう」
「そーそー。拓海のいう通りだぜ。それより美咲、その格好を何とかしろよ」
「煩いなあ。急に変えられないよ」
久しぶりに、いつも一緒だった頃の気遣いの無いやり取りに触れ、僕は懐かしさと喜びでいっぱいだ。
例え時間がかかっても、この関係を取り戻す──本気でそう思ってた。
「じゃあ、おやすみ」
診療所からの帰り路、先ず、僕が二人と分かれた。
「ああ、またメールくれよ」
「拓海、ありがとう」
海人と美咲が、分かれ際の言葉を発したその時、僕の中に隠れていた不安が表に出てきた。
──何故、渚は変更のメール を僕に返さなかったんだろう?言い出したのは僕なのに、美咲に返すなんて筋違いだ。
そう考えたところで、僕は自分の思い違いだと切り捨てた。一日中、海の上だったから、繋がらなかったのかも知れない。
(そうだよ……僕の思い過ごしだ)
家路を急ごう。さっさと寝てしまって、下らない考えを忘れてしまおう。そう思うほど僕の頭は冴えてしまい、結論を求めてる。
「くそっ!」
心のもやもやに耐え切れず、足が駆け出そうとした瞬間、傍らに白いものが見えた。
「あら?お帰りなさい」
白っぽいワンピース姿の沙織さんだった。
「ずいぶんと遅いのね」
「ちょっと……今日は用事があって」
胸元の広く開いた格好に、胸のドキドキが速くなるばかりか、目のやり場に困ってしまう。
そもそも、この人はこんな時刻に此処で何をしてるんだ。
「用事って?」
「と、友達の母さんが入院してるので、お見舞いに……」
「ふーん。ところで、何で向こう向いて喋るの?」
沙織さんは、僕が困ってるのを解っていながら、さらに困らせるのを楽しんでるみたいだ。
「……何でって、解るでしょう」
「お姉さんの胸の谷間が気になって、会話どころじゃないって?」
「解ってるなら聞かないで下さい。大体、夜にそんな格好でいるなんて」
「だってこれ、パジャマだもん。仕方ないでしょう」
僕が言ってるのは、そういうことじゃないんだけど。
「そ、それより、沙織さんこそ何で此処にいるんです?」
「あ!そうだった」
沙織さんは何かを思い出したみたいで、僕の背後からはビニール袋の音が聞こえて来る。
「はい!これ」
何か、僕に手渡したいみたいだ。