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貴女について思う幾つかのこと
【初恋 恋愛小説】

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様々なこと-5

「何ですか?」
「この間、貝をいただいたお礼よ。それより、好い加減こっち向きなさいよ」
「いや、あの……」
「言ったでしょう。人と話す時は、相手の方を向きなさいって」

 確かに、人から物をもらうのに、向こうを向いてちゃ失礼にあたる。僕は渋々、沙織さんの方を向いた。

「はい。どうぞ」

 差し出されたビニール袋の先に、ワンピースの隙間から、ふたつの膨らみが見えた。

「あーっもう!」

 まんまとやられた僕を見て、沙織さんは嬉しそうだ。

「どう?興奮した」
「な、な、何ですか!そんなに僕をからかって楽しいんですか」

 何だか腹が立つ。この人は、恥かしいということが無いのか。それとも女性全部がこうなのか。
 そんな思いを余所にケラケラと笑う様は、僕に、はめられた悔しさと笑顔にさせた喜びをもたらし、何とも言えない複雑な感情が涌き上がった。

「そんなつもりじゃないんだけど、反応が面白いから、ついついね」

 そういうつもりなら、僕も、沙織さんの“苦手”なことを言って、反応を楽しんでやる。

「何だか、がっかりです」
「そんなに起こらないでよ。もうしないから」
「いえ、言わせて下さい。貴女を初めて見た時、こんな綺麗な人がいるのかって、僕は胸がドキドキして、身体は痺れたようになってしまったんです」
「ちょ、止めなさいよ……」
「本当です。こんな人と恋人になれたら、どんなに幸せだろうって思いましたよ」

 多分、寝不足と複雑な感情が原因だろう。相手を困らせようとして、僕はいつの間にか、自分が追い込まれていることに気がついた。
 すなわち、知らないうちに沙織さんに告白してたのだ。

「もう辞めなさいって。怒るわよ」

 でも、もう止まらない。最後まで告げろって心が叫んでる。

「──冗談なんかじゃありません。だからこそ貴女にこんな扱いをされて、とても悲しいんです」
「分かった。分かったから、ちょっと落ち着いて……」

 沙織さんの顔が困っている。僕の急変ぶりを見て、すっかり驚いてるみたいだ。
 なるほど。相手が楽しい反応を見せてくれれば、からかいたくなるのも当然かも知れない。

「どうです?からかわれると悔しいでしょう」

 そう言った途端、沙織さんは声を震わせて「騙したわね!」と言って悔しがった。暗がりで判らなかったけど、おそらく血相を変えていたと思う。

「騙してなんかいません……最初はそのつもりだったんだけど、途中からはそれも忘れてしまって。
 だから、言ったことは本当です。僕は最初逢った……」
「もう辞めて!」

 否定の叫びが、僕の想いを遮った。

「沙織さん……」
「もう辞めましょう……この話はこれでおしまい。わたしがやり過ぎた。もう、からかったりしない、ごめんなさい」

 僕の中で後悔という思いが涌き上がる。調子に乗り過ぎて本気で相手を追いつめた上に、謝らせてしまった。
 軽い気持ちがまき起こした結果に、自分がどれだけ情けない人間かを気づく。


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