様々なこと-11
「あのさあ……お願いがあるんだけど」
「な、何ですか?」
胸がドキドキするのは、これから始まる嫌なことに対しての予兆だろうか。
貴女は俯き、足をブラブラと遊ばせるばかりで、とても言い出すような雰囲気じゃない。
「あの、好い加減、頼みを教えてもらえませんか?」
明日も朝が早い。そろそろ終わりにしないと、また寝不足のまま仕事では正直、身体が危ない。
すると、貴女は意を決したみたいに、僕を見すえた。
「な、何です?」
「あのね、パンツ見せてくれるかな?」
「へっ?」
「だから、履いてるパンツを見せて」
頼みを聞かされた僕は声が出ない。もちろん、呆れ果ててしまってだ。
「じ、冗談じゃない!何で僕が」
次に僕は、強い声で断固拒否した。人目になんか晒したら、自分の物が“大変なこと”になる──そんな屈辱、絶対嫌だ。
でも貴女は、僕のこんな気持ちを気にした様子もない。
「わざわざ買ったのよ。見せてくれたって良いんじゃない」
──なんだって!
「わざわざって……いつ?」
「一昨日よ。岬の先に友人が住んでいて、下着の販売をやってるのよ」
「それって、夕方行きませんでした?」
「そうよ。どうして?」
どうやら僕は又、大きな勘違いをしたようだ。
(なあんだ。あれは、僕へのお礼を買いに行ってたのか……)
不安な原因があっけなく解明されて、僕はおかしくてたまらない。自分があまりに滑稽過ぎて、笑ってしまった。
「アハハハ!……情けない……沙織さんが歩いて行くのを見て……ハハ!不安な顔して」
突然、笑い出した僕に、貴女は最初、戸惑ってるみたいで、でも、すぐに笑みを浮かべると止むまで待っててくれた。
「ねえ、だめ?」
そしてまた、貴女の頼みが再開された。
この頃にはもう、どうでも良くなってしまい、
「負けました。いいですよ」
僕はとうとう、貴女の頼みを聞き入れてしまった。
「やった!本当に?ありがとう」
その喜びようは尋常とは思えないほどに。
「その代わり、金曜日の夜にしてもらえますか」
「ええっ!今じゃないの!?」「一日中履いてて汗かいてるんですよ。そんなのを見せるのは死んでも嫌です。
金曜日なら、父さんも飲みに行っていないし、風呂から上がったら見せますよ」
提案を聞いた貴女は、あの時と同じ様に、小首を傾げてしばらく考えてたけど、最終的に「分かったわ」と言って、承諾してくれた。