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貴女について思う幾つかのこと
【初恋 恋愛小説】

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様々なこと-10

 自宅に続く路地へと入り、一歩々と上がっていく。いつもだと駆け登るこの路も、今はそんな気力もない。
 でも、こんな惨めな姿は帰り着くまでで、父の前では、普段通りの自分でいなきゃいけない。

(誤ったのは認めても、父の勝ちだなんて僕は認めない)

 さっきまで、どん底だった僕の気持ちが、父のことを思っただけで、強い感情と力のようなものが涌き上がり、路地を踏みしめる足に力が入った。

 その時だ。

「こんばんは、拓海くん」

 分かれ路の向こうから、貴女が現れた。昨日と同じ、胸元の開いたワンピース姿で僕に微笑み掛けてきた。

「こ、こんばんは……」

 いつもなら喜んでいい場面だけど、正直、今日は会いたくなかった。
 そんな僕の変化を、貴女はすぐに気づいた。

「どうしたの?やけに深刻な顔して」
「そんなこと……あ、ありませんよ」

 まずい!──沙織さんに気づかれたら、心の中に留めた挫折を吐き出してしまいかねない。

「いや、いつもと違うわ。目に力が感じられない……よほど、酷い目にあったみたいね」

 何でこの人は、僕の心の中まで見透かそうとするんだ。
 折角、心の中に圧し留めようとしてるのに、何で表面に引っ張り上げようとする。

「僕にも……色々あるんです。放って置いてくれませんか」
「拓海くん……」
「やっと落ち着き出したところなのに……また嫌な気分が……」
「だったら、無理に聞かない。でも、もし話せるようになったら打ち明けて。
 悲しいことでも話し相手がいれば、少しは気が楽になるわ」「すいません……沙織さんにまで気を遣わせて」
「ううん。全然、気にしないで」

 こんなところ、女の人に見せちゃいけないって解ってる。だけど、貴女になら、僕の弱い部分を見られても構わないし、むしろ知ってもらいたい。

「ところで、アレは履いてみた?」

 貴女は僕を気遣って、明るい話題に切り替えてくれた。

「アレって、パンツのことですか?」

 唯、あまりにも振り幅が大きくて、正直、戸惑ってしまう。

「そうよ。履いてみた」
「え、ええ、まあ……何です?そんな嬉しそうな顔して」

 にんまりと笑った顔は明らかな企みを感じさせ、僕に、言いようのない嫌な予感をさせた。


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