投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

It's
【ラブコメ 官能小説】

It'sの最初へ It's 78 It's 80 It'sの最後へ

△△△-6

「優菜ー」

ドアの向こうから聞こえてくる母の声。
最後に日の光を浴びたのはいつだっただろうか。
外はもう、寒いのだろうか。
雪は降っているのだろうか。
優菜は雨戸まで閉ざされた暗がりの中でパソコンに向かい、意味もなくニュースを見続けた。
自分の名前がいつ載るか、気が気ではなかった。
もしかしたらそんなのとっくの昔に終わったかもしれない。
ずいぶん前に開封したスナック菓子の袋に手を突っ込む。
湿気を吸い込んでいて、微妙な食感がする。
菓子を口に放り込んだあと、指を舐める。
そしてその指の爪をかじる。
それが一番、落ち着く。
コリコリと爪の音が頭蓋に響き渡る。

自分は今、生きているのだろうか。
生きている実感などない。
生きているのか死んでいるのか分からないのなら、いっそ死を選びたい。
有沙のところに行って、2人で幸せな時間を送りたい。

「優菜ー。お客さんよ」

客など来るはずがない。
事情聴取か何かか?
どうでもいい。

「風間さん…来てるわよ。五十嵐くんと一緒に」

親指の爪を思い切り噛む。
血が滲んだ。
何の冗談だ。
そんなのに騙されるか。

「優菜ちゃん…開けて」

これは夢か?
悪い夢だ。
吐きそうになる。
気付いたらドアに手を掛けていた。
ゆっくり開ける。



そこにいたのは、自分がこの手で殺そうとした人。



「ひな…ちゃん…」
陽向は泣きそうな顔で微笑んだ。


It'sの最初へ It's 78 It's 80 It'sの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前