△△△-6
「優菜ー」
ドアの向こうから聞こえてくる母の声。
最後に日の光を浴びたのはいつだっただろうか。
外はもう、寒いのだろうか。
雪は降っているのだろうか。
優菜は雨戸まで閉ざされた暗がりの中でパソコンに向かい、意味もなくニュースを見続けた。
自分の名前がいつ載るか、気が気ではなかった。
もしかしたらそんなのとっくの昔に終わったかもしれない。
ずいぶん前に開封したスナック菓子の袋に手を突っ込む。
湿気を吸い込んでいて、微妙な食感がする。
菓子を口に放り込んだあと、指を舐める。
そしてその指の爪をかじる。
それが一番、落ち着く。
コリコリと爪の音が頭蓋に響き渡る。
自分は今、生きているのだろうか。
生きている実感などない。
生きているのか死んでいるのか分からないのなら、いっそ死を選びたい。
有沙のところに行って、2人で幸せな時間を送りたい。
「優菜ー。お客さんよ」
客など来るはずがない。
事情聴取か何かか?
どうでもいい。
「風間さん…来てるわよ。五十嵐くんと一緒に」
親指の爪を思い切り噛む。
血が滲んだ。
何の冗談だ。
そんなのに騙されるか。
「優菜ちゃん…開けて」
これは夢か?
悪い夢だ。
吐きそうになる。
気付いたらドアに手を掛けていた。
ゆっくり開ける。
そこにいたのは、自分がこの手で殺そうとした人。
「ひな…ちゃん…」
陽向は泣きそうな顔で微笑んだ。