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It's
【ラブコメ 官能小説】

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△△△-5

「花井さんと会ったの、今日。花井さんのことも知ってるよね?」
「知ってるよ」
「湊の高校にも行ったの」
「…なんで」
陽向は、優菜の居場所は花井も知らなくて、高校になら住所が保管されているかもしれないという考えから母校に行き、ようやく知ることができたと伝えた。
北海道の旭川に住んでいると。
「本当にいるかは分からないけど…。電話して確かめてみようと思ってる」
「……」
「もし、いたら……」
陽向は暴れ出す心臓の鼓動を悟られまいと、息を整えた。
「優菜ちゃんと会って、一緒に有沙ちゃんの所に行ってほしい」
陽向は湊の顔を見ることができなかった。
「で、いつ電話すんの?」
湊は答えを言わず、陽向にそう言った。
「明日…」
「そ」
「湊明日なんかあるの?」
「バイト」
陽向は少し間を置いて「湊がいない時に電話した方がいい?」と言った。
「別に。お前が決めろよ」
「……」
この話になると湊は不機嫌になる。
でも、これを終わらせるには湊の力も必要なんだ…。
「分かった」
陽向は立ち上がるとキッチンに向かって夜ご飯を作り始めた。
湊はソファーに寝転がって携帯をいじっている。
明日電話することを考えると、今からドキドキしてきた。
冷蔵庫を開けて卵を取り出す。
やる気のないオムライスを作り、嫌な空気のままそれを食べる。
美味しくない。
食べ終わった後、無言でテレビを見ていると、不意に湊に後ろから抱きしめられた。
「あ…なに…」
「ね、俺が嫌がってるの分からない?」
「……」
「大切な人を傷付けた相手なんかに二度と会いたくねーのが本音だよ。会ったらあいつのこと殺しちゃいそーなんだけど、俺」
湊に『大切な人』と言われ、心臓が疼く。
陽向は黙って俯いた。
確かにそうかもしれない。
自分が逆の立場だったら絶対に行きたくないと言うに違いない。
でも……
優菜と会って最後の別れを告げたい。
「分かってるよ…」
陽向は涙声で呟いた。
「そんなの分かってるよ!湊が行きたくないのはちゃんと分かってるよ!でも…一緒に行ってほしいの……。有沙ちゃんのためにも、優菜ちゃんのためにも…湊が一緒じゃなきゃ意味ないの!」
涙でぐしょぐしょになった顔で湊を見る。
湊は陽向をきつく抱き締めるとため息をついた。
「泣くんじゃねーよ…」
「っう…」
今度は前から抱き締められ、髪を撫でられる。
心臓がドキドキいっている。
陽向はワガママな子供のように泣きじゃくった。
「陽向…」
「おこ…らないで…。ちゃんと…分かってるから…。ワガママなのは…分かってる…っ…けど…」
「ワガママとかそーゆーんじゃねーんだよ。お前を二度とあんな目に遭わせたくない…ただそれだけ」
湊はため息をつくと、「泣き止めよ」と言って陽向の涙と鼻水をティッシュで拭いた。
「はい、お鼻ちーんして」
「…っう…んもぉっ!!!ばかっ!」
湊の腕を叩く。
怒っているのか、そうでないのかよく分からない。
行ってくれるのか、そうでないのかも。
いつもこうしてはぐらかされるのだ。
彼の口から「行く」という確定した答えは未だに得られない。
日にちを決めれば行くと言ってくれるのだろうか。
それさえも分からない。
でも自分だけ行ったって意味ない。
湊が一緒じゃなきゃ、意味ない。


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