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「ま、ここまでされたら無理だけど」
もう一度したキスが情事開始の合図となった。
「服、脱がして」
陽向は言われた通り、緩めかけたネクタイに手をかけてゆっくりと解いた。
スルスルとワイシャツと擦れ合うネクタイの音が大きく聞こえる。
ネクタイをサイドテーブルに置き、ワイシャツのボタンを外していく。
湊がワイシャツをベッドの下に放ると、陽向は程よく筋肉のついた胸板に頬を寄せた。
乳首を口に含み、舐め回す。
「んっ…」
湊は陽向の頭を撫でながら快感に浸った。
ベルトに手をかけて外す。
陽向は湊に刺激を送りながら器用にズボンと下着を脱がした。
いきり立ったものを優しく扱き始める。
湊は陽向のスカートと下着を取り去ると、既に濡れそぼったそこに指を這わせた。
2人でベッドに横になり、夢中で刺激し合う。
「んぁ…ぁ…」
「っあ…」
指が2本、入り込む。
クチュクチュといやらしい音が聞こえてくる。
湊は起き上がって陽向の脚を広げさせると、秘部に舌を這わせた。
「んんっ!あっ…」
激しく舐め回される。
湊の腕を掴むと、指が絡められた。
クリトリスを指で擦り上げられ、陽向は湊の手をギュッと握って絶頂に達した。
「はぁ…あ……もうっ!」
陽向はほっぺたをピンク色に染めて湊の腕を叩いた。
「すぐイっちゃダメ」
「…そんなの無理」
「なんで」
「だって…気持ちいんだもん…」
湊は微笑むと、陽向をベッドに寝かせ頭の下に枕を入れ「素直だね、ひなちゃんは」と言った。
おでこにちゅっとキスをした後、湊は陽向の秘部に自分の物を当てがった。
「入れるよ…」
「ん…」
ゆっくり湊のものが入り込んでくる。
陽向は枕を握りしめて顔をしかめた。
「あぁぅ…んっ…」
「は…ぁ…」
入り切ったところで、湊が抱き締めてくれる。
腰を送られる度にいつもと同じ幸福感に包まれる。
「はぁ…ぁ…湊…」
陽向は息をつく湊の唇に自分のそれを重ねた。
湊もそれに応えてくれる。
唇が、耳から首筋へ移動する。
陽向は目を閉じて小さい喘ぎ声を上げた。
湊はいつも、甘くて包み込むようなセックスをしてくれる。
寂しがりやで、自分では分からないけど甘えん坊だということを知っているから、こうしていつも抱き締めてくれる。
たまに、優しく微笑んでキスをしてくれる。
それがたまらなく幸せ…。
「あっ…ん…」
「ひな…」
耳元で囁く心地良い低音。
聴くだけで心臓が暴れ出す。
「…気持ちい?」
「ん…気持ちい……すごく…」
「俺も…」
湊の動きが激しさを増す。
奥まで打ち付けられる大きすぎるものに壊されてしまいそうになる。
陽向は「イっちゃう…」と呟いて湊の背中をきつく抱き締めた。
それを聞いた湊は「イきな…」と優しく言った。
温かい体温に包まれて、陽向は幸せな快感にたどり着いた……。
陽向のお腹に放たれた液体を、湊はティッシュで優しく拭った。
荒い息をつきながら、陽向は湊にイヒヒッと笑いかけた。
同じように荒い息をつく湊が横に寝そべる。
「顔真っ赤」
「疲れちゃった…」
「今日のお前、めちゃくちゃ気持ち良さそーだった」
「…気持ち良かった」
陽向は湊にしがみつき、腕の筋肉に唇を寄せた。
じっとりと汗が滲んでいる。
「わー、びちょびちょ」
湊は笑い声を上げて陽向の頭を撫でた。
こうしてもらっていると、死ぬほど落ち着く。
「ひな」
「ん?」
湊に顔を向けると、ちゅっとキスされた。
顔がにやけてしまう。
陽向も湊の唇にちゅっとキスする。
間近で見られているとなんだか恥ずかしくて、湊の首筋に顔をうずめた。
セックスが終わった後のこの時間が好き。
いつまでも触れていたいと思ってしまう。
意地悪だけど本当は優しくて、誰よりも自分のことを理解してくれてて、どんなワガママにも付き合ってくれる。
今まで知らなかった五十嵐湊を、自分だけにさらけ出してくれている。
素の五十嵐湊を心から愛おしいと思った。
寝ぼすけでたくさん困らせてもしょーがねーなって許してくれる。
ソファーで寝てしまった時はベッドまで連れてって「アホ」と言うけど、決まって「風邪引いたら発作起こすだろ」って言う。
音楽が大好きで、素直な音楽を創り上げて楽しそうに演奏する。
自分が知らないことをたくさん知ってる。
間違ってることは全力で説教する。
全部優しく「そうだね」と受け止めるだけの優しさは間違ってると気付かされた。
そして、誰よりも自分のことを心配してくれる。
喘息持ちと知ってからタバコを辞めたのには驚いた。
優菜との一件の時も、湊は必死で自分を守ってくれようとしていた。
これからどんなことがあろうとも、湊の側から離れたくない。
こんなダメなどうしようもない自分を守り、愛してくれるのは、きっと湊しかいない。