希望か絶望か・・・?-1
「あれは・・・」
夜が明けて間もない町のはずれを、コソコソと移動しているのは・・・あの偽の女王と大勢の付き人たちだった。
「まったく人騒がせな人たちだ・・・」
こうやって皆無事だから良かったものの、彼女らが町人の好意につけ込んでいる気がして秀悠はやり切れない思いを胸に抱いていた。
「一発かましてやるか?」
バキバキと指を鳴らしたゼンの手からは稲妻が走り、それをなだめている葵が可愛らしい。
「あまり悪事を働くようでしたら、私が」
穏やかに微笑み葵に拍子抜けしたゼンは腕をおろし、小さくため息をついた。
「わかったわかった」
同時にほっと胸をなでおろした葵と秀悠は顔を見合わせて笑った。ゼンに殴られでもしたら即死かもしれないからだ。
それから秀悠は途中の町で酒を購入し、颯の手綱をひきながら彼に話しかけている。
「颯、待たせてごめんな。お前には色々世話になった」
ブルル・・・
颯の表情は明るく、秀悠の言葉を理解しているように彼の脇腹へと顔を寄せて人懐こく喉を鳴らしている。
「ん?なぁに?」
颯が葵へと顔を近づけてつぶらな瞳を瞬かせている。
「・・・大事な女が無事でよかったな?」
「えっ!!」
「こ、こら颯っ!!」
大慌ての秀悠は顔を真っ赤にしながらジタバタと騒いでいる。くすくす笑う葵と目が合うと、その愛らしさに目を奪われ・・・見惚れてしまっている自分がいた。
休憩をとりながら歩き続けると、やがて颯が鼻をひくつかせ家が近いことを感じ取った。
「あっ・・・!!あの人だ!!」
颯を連れた秀悠が酒の瓶を掲げ中年の男に向かって手を振っている。
何やら楽し気に言葉を交わし、人のよさそうな中年の男がこちらを見ながら秀悠を肘で小突いている。
丁寧にお辞儀をした葵に、帽子を脱いで頭をさげた男は秀悠から酒の瓶と颯の手綱を受け取るとバシバシと彼の背を叩き笑い声をあげている。
「葵・・・ここから神楽というやつの屋敷はかなり距離があるのか?」
暇そうに木に背を預けているゼンがため息交じりに空を見上げている。