解決の糸口X-1
そう言って秀悠の横を通りゼンの元へと歩み寄る葵。
「は、はいっ!!」
秀悠はぎゅっと拳を握りしめ、葵が向けてくれた微笑みと言葉を胸にやる気をみなぎらせていた。
「おかえりなさいゼン様」
「あぁ・・・遅くなってすまない。扉の鍵が壊れていたようだが・・・何があった?」
「い、いえ・・・ゼン様の心配するようなことは・・・」
さらりと葵の前髪をかきあげたゼンはそのまま手を下げ、あやすように目元へと指先で触れた。葵へと向けられていたゼンの視線はチラリと秀悠へと流れ、
「何もなかった・・・とは言わせないぞ」
秀悠へと向けられたゼンの批判的な視線に、葵がすすみ出た。
「ゼン様、扉の鍵を壊したのは私です。寝惚けて外に出てしまったのを秀悠さんが連れ戻してくださって・・・」
照れたように笑う葵の後ろで秀悠がゆっくり近づいてくる。
「申し訳ありませんゼンさん。私の力不足で葵さんを危険な目に会わせてしまいました」
秀悠の言葉に組んでいた腕を解いたゼンの瞳が一瞬、殺気を含んだ気がした。
深く頭を下げる秀悠に戸惑った視線を向けた葵は、ともにゼンに向かって頭を下げた。
「違うんです、私が至らないばかりに皆さんにご迷惑をおかけしてしまって・・・」
曄子を人質に葵が連れ去られたこと、神官たちが彼女を探しにきたことなどは伏せ・・・神楽の真実を語り始めた。
「ふーん?じゃああの偽物たちはお前を探しに来たお騒がせ一行ってことか・・・」
「はい、神楽さん率いる数名はそのようですが・・・女性のほうは娯楽で町々を巡っているようです」
「そして秀悠さんの力がきっと必要になる。そう思ったので彼を迎えに来ました」
事の詳細を詳しく聞いていなかった秀悠はほっとしたように胸を落ち着けると、立ちあがって常に持ち歩いているバッグへ本やら調剤道具を詰め込みはじめた。
「きっと葵様のお役に立ってみせます!!私だって力はなくとも出来ることがあるはずですから!!」
張り切る秀悠をみて葵が目を細めて頷いた。
「夜も明けたことですし・・・そろそろ出発いたしましょうか」
「・・・・」
その様子をゼンは黙って見つめていた。