まさかの自由研究-6
そしてここでようやく『恥ずかしいお願い』の意味を理解した。
お姉さんが恥ずかしい思いをするんじゃなくて、ぼくが恥ずかしくなるっていう意味だったんだ、と。
2人の目線の高さがおなじなのは、遥香のほうが膝立ちをしているからだ。
だから健太郎が下を向いたときには、遥香の胸元の一部が見えるはずだったのに、それどころかブラジャーのカップそのものが視界に入ってきた。
これはいったいどういうことだろう。
さっきまではシャツのボタンもきちんとしていたし、下着の存在にも興味なんてなかった。
それなのに今、目の前のお姉さんはシャツを半分脱いで、肌着を首のあたりまでまくり上げて、下着という1枚の薄い布をさらしている。
その下はもう当然、あたりまえの常識なら、エッチで裸でヌードな、お姉さんのおっぱいがあるはずで……。
困惑する少年を楽しむように、遥香はシャツとキャミソールをゆっくり脱ぎ落とす。
くびれたウエスト、脇のあたりにできる皮膚のシワ、わずかに見える胸の円周までもが、かぎりなく白に近い肌色をしている。
「きみには何もしないから、もう少しだけお姉さんのお願いを聞いてくれる?」
「まつ毛はもういいの?」
「そっちはもう大丈夫になっちゃったから、ありがとう」
遥香は健太郎の両手をつかむと、そのまま自分のほうへ引き寄せて胸に触れさせた。
ここまできたら、どんなことが起こっても驚かないつもりで、健太郎は男の覚悟を決める。
「やわらかいでしょ?」
彼女の言葉どおりだと、少年は赤面してうなずく。
ブラジャーの表面の細かい刺繍やら骨ばったワイヤーのおかげで、手触りはザラザラとして落ち着かない。
けれども下着越しの胸のやわらかさといったら、水風船とかビーチボールの感じに似ていて、しかも生温かい。
押した分だけ返ってくる。
「わたし、すごく肩が凝ってるの。胸のマッサージをすれば楽になるんだけどな」
「これって、人助けになるよね?」
「それは、きみしだいだよ」
室内の空気が動くたびに、贅沢な花の香りが漂ってくる。
この夏いちばんの体験になりそうな予感に、健太郎少年は手に汗を握った。