解決の糸口W-1
わずかに体を起こした秀悠の瞳にとらえられ、その顔がゆっくりと近づいた。
「私で力になれるのでしたら・・・いつでもおっしゃってくださいね?」
たくさん迷惑をかけ、それでもなお傍にいてくれる秀悠のためならば・・・出来る限りのことはしてやりたいと思っている葵は曇りのない微笑みを浮かべている。
「・・・本当ですか?」
秀悠の瞳は熱っぽく葵を見つめたまま動かず、顔だけが近づいてくる。
「葵さんしか・・・葵さんにしか叶えられない願いです」
「しゅう・・・」
優しく手首を掴まれ、葵の唇に秀悠の唇がゆっくり重ねられた。
目を見開いた葵は秀悠を拒否することも忘れ、ただただ驚いた表情を見せている。
「・・・はぁっ」
ほんのわずかに唇を離した合間から秀悠の切ない吐息が漏れた。
秀悠の頬は恥ずかし気に赤く染まり、切なさを含んだ瞳には葵の読み取れない表情がうつっている。
「秀悠さんの願いは・・・口付けなのですか?」
「え・・・?」
ガックリと肩を落とした秀悠はうなだれるように額を抑えた。
「あの・・・葵さん、違うんです・・・」
すぅ、と深呼吸をし背筋を伸ばした秀悠は真っ直ぐに葵を見つめて口を開いた。
「私は・・・私は葵さんが好きです。仙水さんやゼンさん、九条さんがあなたを愛していたとしても・・・」
「あの三人に負けないくらい、いい男になって葵さんを振り向かせてみせます」
愛しい人に想いを告げた秀悠の表情はとても穏やかで、その顔には優しい朝日がキラキラと光差していた。
「秀悠さんは今でも十分素晴らしい方だと・・・」
くすっと笑いながら秀悠を見つめる葵の耳に・・・コンと壁をノックするような音が響いた。
音に気が付いた葵と秀悠がその方向へ目を向けると・・・
「・・・俺に宣戦布告してるつもりか?」
不機嫌そうに眉間に皺をよせたゼンが、壁に寄りかかった姿勢で鋭い眼差しを二人に投げかけていた。
「ゼン様・・・」
ゆっくり腰をあげた葵は秀悠に一度笑みを向け・・・
「いつでも私は貴方を見ています。その成長、拝見させていただきますね」