十八歳果実熟れ頃(1)-7
坂崎は美緒と話しているうちにこの子なら少しばかりくだけてもいいように思えてきた。
「美緒ちゃんは、バストは何カップなの?」
笑いながら言ったのだが、彼としては思い切りのいる質問であった。美緒は拍子抜けするほどあっさりと答えた。
「D。彩香はBだけど、あの子、形がいいでしょう?」
「よくわからないけど……」
「見なかった?」
「そんな、形までわからないよ……」
苦笑するしかない。煙草を吸って目を上げると美緒がじっと見据えていた。
(なんだ?……)
美緒はソファに腰をおろし、心持ち彼に近寄った。
「伯父さん、あたしも抱いてくれるでしょう?」
「!……」
耳を疑った。合わせた視線が外せない。
「彩香に聞いた」
(何を?……)
「嬉しそうだった。伯父さんにバージンあげたって」
「え?……」
(ばかな……そんな……)
頭が混乱してきた。
「だからあたしも……」
坂崎は忙しなく煙草を吸い、言葉を探した。
「あれは……あの時は……」
「あたしたち、ずっと伯父さんが好きだったからね。本気では考えなかったけど、あたしだってバージンは伯父さんにって思ったことがあったくらい。そしたら彩香がほんとに実行しちゃった」
言い方に責めるような調子はないが坂崎は委縮して動揺を隠そうとうろたえていた。
「あたし、去年、経験しちゃったの。伯父さんと似てる感じの先生と。だから余計残念なの。あたしも伯父さんがよかったのに」
何と言う軽い物言いなのだろう。四十過ぎの男が絶句しているというのに美緒はいとも簡単に初体験を語った。
彩香は何を、どんな風に話したのだろう。若い体にのめり込んだ自分を思い返して顔が熱くなった。
「彩香には、悪いことをした……」
「そうじゃないって、伯父さん。彩香、喜んでるんだよ。嬉しかったんだよ」
「そんな……。彩香、何て言ってた?」
「何てって?」
「うん……その時のこと……」
「伯父さんとセックスしたって。それだけ。彩香、積極的だったでしょ。そのつもりで来たんだって。そうしないと伯父さんは真面目だからしてくれないからって」
(何もしなくて当たり前だ……)
「他には?」
「別に。こっちも訊かないし。でもあの子、まだオルガスムス、知らないでしょ?初めてじゃ無理だもんね。あたしは知ってるわ」
(呆れた……)
だが、どうやら細部について語ってはいないようで坂崎は妙な安心をした。
「どうかしてたんだな……」
真希子の顔が浮かぶ。
「お母さんには言うかな……」
「言わないよ。怒られちゃうよ」
「そうだろうな。伯父の立場で、俺は……」
「怒るって、違う意味よ、伯父さん」
「違う意味?」
「うん。だってママ、伯父さんのこと好きなんだもん。だから伯父さんを取ったって知ったら怒ると思う。そういう意味」
「そんなバカな……」
「ほんとよ。前からそうよ。わかるんだ、何となく。伯母さんが生きてる時から。伯母さんには悪いけど」
お休みのキスをして部屋に消えた真希子を思い出した。
(酔ったふりをしていたのだろうか)
右往左往していた気持ちが徐々に落ち着きを取り戻してきた。とはいえ、あまりに都合のいい成行きに夢をみているようだった。
(信じられない……)が、現実に美緒がいて、抱いてほしいと言っている。彩香も抱かれるつもりだったという。
(どうなっているんだ……)
考えがまとまらない。まとまるはずがない。だが、男としてこれほどの歓びはない。十六歳の少女が中年男の自分に身を任せ、今度は十八歳の美緒が抱いて欲しいという。そして真希子までひそかに好意を持ってくれている。
(やはり、わからない……)
だが、現実だ。頭の中を振り払った。
とにかく、今は美緒だ。
(据え膳とはまさにこのことだ……)
開き直って、とまでは図々しくはなれないが、欲情がはっきりした勢いをもって活動し始めていた。
(こんな機会は一生のうちにどれほどあるものか……皆無といっていいだろう……)
自分に言い聞かせるというより呟きに似ていた。
「でも、どうしてこんな中年の俺に……」
「伯父さんって、きっとフェロモンあるのよ。あたしたちにぴったりの男のフェロモン」
「フェロモン……」
幼い頃、美緒も彩香も坂崎に父性を感じて慕っていたのだと思う。それがいつしか『男』として意識する匂いを嗅ぎ取ったのだとすれば、やはり男の存在が際立つ家族構成が根底にあるように思えてくる。女系家族の恩恵……。そう考えるとせっかくの特権である。望みどおり存分に駆使してこそ『男』ではないか。
「フェロモンなら美緒ちゃんの方が強烈だよ」
「うそだ」
「ほんとだよ。すてきだ。きれいだ」
「ほんとに?」
坂崎は話しながら完全に勃起していた。
「もう、昂奮してる。来た時からたまらなかったんだ」
「女として見てくれてる?」
「もちろん、もちろんだ」
「嬉しい、伯父さん……」
坂崎は立ち上がって美緒の体に手を伸ばしていった。