解決の糸口V-1
ほんのわずかな間、葵が眠りへと落ちているころ・・・頭と肩に微かな温もりを感じて秀悠は目覚めた。
目を開けると、真っ白な衣に柔らかそうな肢体を包んでいる葵の下腹部あたりに焦点が定まった。
「・・・っ!?」
やや寝惚けている秀悠は体を硬直させ、必死に自分の置かれている状況を探っていた。
(っそ、そうか・・・あのまま葵さんの膝の上で・・・・)
手のひらに感じる、自分のものではない柔らかな感触。自分が大胆にも葵の腰を抱きしめているような恰好であることに初めて気が付いた。
「・・・すっ、す、すすみませんっっ葵さん!!!」
思わず起き上がろうとした秀悠は、絹のような手触りの葵の衣の裾に手をついてしまった。
「うわーっ!!」
長椅子からズレ落ちる秀悠の体を柔らかな白い腕が優しく包んだ。
「おはようございます秀悠さん・・・?」
ぼんやりと秀悠の瞳を覗き込む葵がゆっくりと彼の体を再び自分の膝の上へと横たえた。
「・・・葵さん」
頬を染めた秀悠は穏やかに微笑む葵から目が離せなくなった。
「葵さん・・・」
戸惑いがちに伸ばした秀悠の手を葵の両手が優しく包んだ。ゆっくり目を閉じて額をその手に押し当ててくる葵。
「・・・秀悠さんの願いは何ですか?」
声までも光輝いているような葵の囁きに、秀悠は目を細めて答えた。
「私の願い・・・ですか・・・」
葵に握りしめられた手に力を込めると、秀悠は葵の太ももへと愛しげに頬をよせた。
「私は早くに両親を亡くしたものですから・・・その痛みも苦しみも理解してるつもりです」
「助けられる命ならば尚更・・・そんな悲しみがこの世界からなくなればいいな、と・・・」
穏やかな笑みを浮かべて秀悠の話に耳を傾けている葵は嬉しそうに口を開いた。
「秀悠さんの願いは・・・皆を思いやる優しい願いなのですね」
キラキラと葵に降り注ぐ光があたりを照らし、まるで星空をうつしたかのような輝きがその身からほとばしる。
「・・・っ」
突如、秀悠に手首を掴まれた葵は大きく目を見開いた。
「・・・それは今までの願いです」
「今は・・・」