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翼の記憶
【ファンタジー 恋愛小説】

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解決の糸口U-1

「ああ、お前ちょっと危ない節があるって話だ。敵とみなしたやつを見る目には殺意さえ感じるぜ」






蒼牙のその言葉に仙水は無表情のまま言い返した。






「こんなにも想っているのに・・・葵様はなぜあんな男のところへ・・・・どんな言葉を使って葵様を誘惑したのでしょうね・・・」






宙を見つめた仙水は独り言のように続ける。






「でも葵様は約束してくださいました。今回のことが片付いたら私の言うとおりにする、と・・・」





ふっと口元を緩めて仙水は妖しげな笑みを浮かべた。






「仙水、もう少し葵に任せてみるのはどうだろう」





仙水の気持ちは痛い程わかるが、前向きに考えはじめた大和は仙水にもわかって欲しかった。





「・・・ええ、私にとっても王である葵様の意志は何よりも優先されるべきもの」






「ですが、彼女を想っての私の行動なら・・・葵様もわかってくださるはずです」






闇に溶け込んでしまいそうな仙水の薄ら笑いに、大和の背中を冷たい汗が流れおちた。






「いつかやると思ってたが・・・九条がとうとう人間に手をあげやがった。お前はそうならないことを祈るぜ」






蒼牙が仙水に念を押すようにいうと、仙水は小さくため息をついた。






「葵様に嫌われたくありませんので、努力はするつもりです」






「仙水お前・・・」






冷たく微笑む仙水の瞳はまったく笑っておらず、蒼牙は彼のもつ素の冷酷さを垣間見た気がした・・・。






―――――・・・






―――夜明けの日が葵と秀悠の横顔を照らしている。窓の外では小鳥たちの朝を知らせるさえずりが耳に心地よい。






穏やかな寝息をたて、葵の膝の上で目を閉じている秀悠の前髪を梳くと・・・






「ぅぅ・・・ん」






幸せような笑みを口元に浮かべて、秀悠が寝返りを打った。反動で葵の腰へと腕をまわした秀悠の手が、力強く葵を引き寄せる。






「・・・っしゅ、秀悠さんっっ」






両手を持ち上げて、戸惑う葵に気が付く様子もなく秀悠は眠り続ける。






「ふふっ」






子供のように無邪気な秀悠の寝顔を見つめながら、葵も心地よい眠りにいざなわれてゆくのであった。







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