解決の糸口T-1
「民に目をかけるのは葵らしくていいと俺は思う。だが・・・この世界には何億の民がいる?」
「ひとつひとつの悩みを解決して回るなんて・・・そんなの出来るわけがない」
悲しげな大和の頬を葵の光が優しくなぞる。大和の声が聞こえているわけはないが、誰にでも等しく葵の加護が向けられているのだといつも感心させられる。
「出来る事はやってやりたいって葵の気持ち・・・わかるぜ。あいつだって少しずつ変わっていってるしな。今だって俺達を頼らず、人の力でなんとかしようとしてるだろ?」
蒼牙は今、葵が秀悠の力を借りて事態を打破しようとしていることに気が付いていた。言ってしまえば葵の力で事をおさめるのは簡単だが、あえて人の力で解決しようとしているのだ。
「この世界はまだ成長途中だ。少しずつ葵の手を離れてやっていけるようになるんじゃねぇか?それにあいつは王だしな!万が一の事なんて起きるわけねぇさ!!」
蒼牙の言葉に大和の不安が和らいでいく。
(そうか、俺は過保護すぎるのかもしれないな・・・)
ふっと笑みを浮かべて蒼牙の声に耳を傾ける大和。
(蒼牙のいうように、葵の苦悩がいつまでも続くわけじゃない・・・民を助けることで葵の命が危険にさらされることがないのなら、俺は今しばらく葵の意志を尊重しよう・・・)
すっきりした笑顔を浮かべる大和の表情に安堵した蒼牙だが、若干の不安も残る。
「あーでも、九条と仙水をどうするかだなー・・・」
気だるげに両手を頭の後ろで組みながら歩く蒼牙の後ろを大和がついていく。
「九条のヤバさは今に始まったことじゃねぇけどさ・・・仙水にも気を付けたほうがいいかもな」
「仙水がどうかしたのか?」
はた、と振り返った蒼牙は思い出した。仙水の逆鱗に触れた曄子とのやりとりを大和は知らなかったのだった。
「そっか、お前は見てないんだったな」
すると、話題に出されていた普段は物静かなもう一人の神官の声が響いた。
「・・・私がどうかしましたか?」
声のトーンからして不機嫌さを滲ませた仙水が二人の前へと姿をあらわした。