見え隠れする想いW-1
「・・・奇病?」
ベッドの上で横たわる傍らで葵が訝しげに眉間にしわを寄せた。
「・・・ここに住む者たちのほとんどが同じ病に侵されているんです。それはやがて死に至る」
静かに神楽は呟いた。
彼の話によればどんな医者にも、まじないも効かず死者は増えるばかりなのだという。
「もしかして神楽さんの望みは・・・」
「はい、あの奇跡をもう一度・・・ローハンや私たちを助けてくださったあの女神様なら・・・」
「葵様・・・数々のご無礼誠に申し訳ございませんでした」
膝をついて深く頭を下げる神楽に慌てた葵は彼の背へ手を添え声をかけた。
「顔をあげてください神楽さん・・・あなた方の幸せを守るのは私の役目です」
「陛下・・・」
顔をあげた神楽は弱々しい笑顔を見せた。彼が見せた強がりや、簡単に吐けない弱音も何か理由があるのかもしれない。重苦しいこの空気にさえ何か嫌なものを感じた葵は、とある人物を呼び寄せることとなる。
――――・・・
一時的に結界を生成し神楽の屋敷を保護すると夜が明ける頃、葵は秀悠の元へと戻ってきていた。
「秀悠さんごめんなさい、色々ご迷惑をおかけしてしまいましたね」
気遣うように秀悠の頬に触れた葵の指先に秀悠の胸はドキリと高鳴った。後ずさる秀悠の頬は赤く、まるで気にしていない葵の無邪気さが彼には戸惑いを覚えた。
「その・・・葵さん、私こそあなたを守れずに守られてばかりで・・・」
ううん、と葵は首を横に振ると、神楽の一件を話はじめた。
「・・・そんなことが・・・」
医者である秀悠なら何かわかるかもしれないと思っていた葵は、彼の力を借りるべくこうして頼みにきていた。
「私も隣村へ馬を返しにいく予定がありますので、夜が明けたら神楽さんの御屋敷にご一緒してもよろしいですか?」
ぱっと明るく顔を上げた葵は秀悠の手を握りしめて花の咲いたような笑顔をみせた。
「ありがとう秀悠さんっ!!あなたならきっとお力を貸してくださると思っていました!!」
「ええ、私にはあなたがついていますから・・・何でも出来る気がします!」
何よりも心強い王が傍にいる。