誤解V-1
「・・・私に何か隠していますね?話してはいただけませんか?」
その様子を大和は影から見つめている。葵や神楽が静かに抜け出したのを大和は見逃していなかったのだ。
(様子がおかしい・・・一体何が起きているんだ)
大和の場所からは葵達の話声は聞こえず、葵が神楽を抱きしめているようにしか見えない。
ヨロヨロと立ちあがった神楽は、再度葵と馬にのせると自分もその背後に乗り直した。
手綱を握る手に力はなく、とても弱々しいものだ。
(あまり力を使わなければ・・・皆に居場所を突き止められることは・・・ないよね?)
迷ったあげく、葵は手綱を握る神楽の手にそっと自分の手を重ねた。
あふれ出る光が葵の手を伝って、神楽の体へと流れ込む。じんわりと広がる優しい光が波紋のように神楽の中に吸い込まれ・・・
苦しげに息を荒げていた神楽の呼吸が穏やかになり、鉛のように重かった体が嘘のように軽くなっていった。
「・・・あなたの優しさにつけ込んだ私の病を癒すとは・・・あなたは本当に優しいというか・・・甘いというか・・・・」
背後から優しく抱きしめられ、葵は戸惑っていた。
(・・・その胸のうちを素直に話せない人もいるんだわ・・・昔の仙水に似ている・・・)
「遠回りなことをせずとも、話してくだされば私はいつでも力になります」
「いいえ、私たちは・・・自業自得ですから・・・」
さらに強く抱きしめられ、何か深い理由があるのだろうと葵は目を閉じた。
「私たち、ですか?」
神楽の気になる物言いに、このあと葵は・・・とある出来事に直面することとなる。
・・・ゆっくりと駆けだした馬の上で神楽の話に耳を傾ける葵は衝撃を受けずにはいられなかった。