誤解T-1
九条の手に握られている聖剣はギラギラと輝きをまとい、一振りで監獄もろとも跡形なく吹き飛ばしていた。
「ぅ・・・ん・・・」
(私どうしたんだっけ・・・いきなり入ってきた男たちに何か嗅がされて・・・・)
意識のハッキリしない曄子は重い瞼を持ち上げると目の前にある端正な顔の持ち主の名を呟いた。
「う、そ・・・仙水・・・さ・・・ん?」
曄子を抱き上げた仙水は冷ややかな視線を彼女へと投げつけた。
「勘違いしないでください。
あなたを助けたのは私たちの意志ではありません」
何が起きたかわからなくとも、仙水が助けに駆けつけてくれたのだと思うと曄子はそれが嬉しかった。
「・・・葵さん、でしょう?」
仙水の衣に顔を埋めて曄子は声を振り絞った。冷たい視線から仙水が自分のことを何とも思っていないことなどよくわかっている。
「仙水さんの瞳にはいつも葵さんだけ・・・葵さんしかうつっていなかったもの・・・」
「・・・隠すつもりはありません。そして彼女を誰にも渡すつもりもありません。あなたにも、秀悠さんにも」
そう言いながらも曄子を抱き上げたまま町まで歩こうとする仙水の前を九条が歩く。
その前にバタバタと駆けこんできたのは蒼牙と秀悠だ。蒼牙は息さえ上がっておらず、その後ろで秀悠は呼吸もままならないほど苦しそうに肩で息をしていた。
「あ・・・秀悠せんせい」
曄子の声に顔をあげた秀悠は、
「よ、曄子さ・・・ん・・・無事で良かった・・・」
言葉少なくフラフラとした足取りで仙水の傍まで来ると、秀悠は深く頭を下げた。
「仙水さんまたご迷惑をおかけして・・・申し訳ありませ・・・んでした」
「・・・・」
そんな秀悠を一瞥すると曄子をおろした仙水は無言のまま蒼牙の元へと歩み寄る。
「よく見つけられたな!!!って、びっくりしたぜー!!九条のやつが何かやりやがったと思ったら・・・ここに何があったんだ?」
もはや瓦礫のみが残ったこの場所には何があったのか想像もできない。
「監獄のようなものが設置されていました。ただ人が中心に集まっているにも関わらず、小さな気配がひとつだけ町はずれにあるものを不信に思ったものですから、ね」