〈屠畜部屋〉-4
『……ふぅん。胸は小さいけど、なかなか悪くないわねぇ?でも、このオマ〇コは何?手入れが行き届いてなくて、不潔で下品だわ……』
タムルの品定めする台詞に、麻里子の眉はピクンと反応した。
麻里子はサロト達の言語を理解出来るので、今の台詞からタムルは新参者だと判ったからだ。
(……まだ…私を……玩具に……)
朧げながら、麻里子の瞳にタムルの姿が映った。
サロトとは別種の気味悪い変質者が、自分の身体に汚らしい欲情の視線を絡めてきている……何度も経験してきた悪寒の走る激しい嫌悪感に、麻里子が慣れる事は無かった……弱々しく、この身体に触れないように願うのみ……。
『見たかの?今の目を……コイツは何時もふて腐れた態度をとって、ワシらを見下すんじゃ』
今の力無い視線をごまかす為に、サロトは口から出任せに嘘をついた。
どうにかしてタムルに歯向かって貰い、気力も体力も充分だと思わせねばならない。
『コイツはワシらの言葉が解るからのう。ああやってジッと聞いてるんじゃ』
タムルは言語の理解が出来ると聞いて、少し驚いたように片方の眉を吊り上げると、直ぐに嬉しそうな表情に変わった。
それは実に禍禍しい、畜人の笑顔だった。
『言葉が解るんだ……て事は、命令させて色々“遊べる”ってコトよねぇ?』
項垂れながらタムルを見詰める姿は、如何にも怒りを溜め込んでいるように見える……その姿を見て、サロトも安堵したように溜め息をつき、タムルに負けぬほどに気味の悪い笑顔を作っていた。
『タムル、これから連れて来られる娘はな、コイツの妹なんじゃ。そいつは最初にワシに遊ばせてくれんか?』
(!!!!)
サロトの口から吐き出された台詞は、麻里子の一番認めたくない台詞……瑠璃子か春奈か、それとも両方か……失せていた眼光に力が少しだけ宿り、その視線はサロトへ向けられた。
(思ったら通りじゃ……妹を出汁に使えば……ムフフフ……)
サロトは思惑通りに麻里子が反応した事に内心ほくそ笑むと、更に言葉を続けた。
『もちろんワシは無茶なコトはせんぞ?“美味しい身体”のまま、タムルの好きなように玩具にして貰うつもりじゃ』
麻里子の唇はブルブルと震え始め、明らかな狼狽えが見えてきた。
妹想いな姉のアキレス腱が瑠璃子と春奈なのだから、それは無理からぬ事であった。