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〈亡者達の誘う地〜刑事・銭森四姉妹〉
【鬼畜 官能小説】

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〈屠畜部屋〉-2

『あらサロトさん。相変わらずな元気っぷりねえ?』


容姿とは掛け離れた“なよなよ”した女性的な言葉遣いは、かえってタムルの異常さを表している……ニヤニヤと笑いながら、恥知らずな二人を見つめたままだ。


『ワシはいつでも元気じゃ。ほれ、コレが新しい嫁じゃよ』


サロトは美津紀を抱き起こすと後ろから抱き着き、美津紀の顔をタムルへ見せた。
その顔は誇らしげで、すっかり崩れた顔で美津紀の頬に口づけをしている。
それは美津紀を溺愛しているとしか見えなかった。


『……これは可愛いお嫁さんねえ。私も妙な気分にさせられるわ……』


何処を見てるか分からない目で、タムルはお世辞とも取れる台詞を吐いた。


(なんなの、この女……腹は出てるし豚にしか見えないわ)


吐いた台詞と心の呟きは、明らかに真逆であった。

肥満としか思えない身体では、その胸肉も単なる贅肉にしか見えず、とてもではないが性的魅力は感じられない。
タムルはサロトの幸せそうな笑顔に、同調していただけだった。


『じゃろう?ワシの一番のお気に入りなんじゃ……悪いが、頼まれてもヤラせてはやらんぞ?』


タムルの本心を見抜けぬサロトは、失笑物の惚気(のろけ)を言って一人笑っていた。
苦笑いのタムルに、サロトは気づきはしない。
何よりタムルの顔は、別の意味で、専務に負けず劣らず感情が読みづらいから無理もない。


『……まあ、そんな事より最近貢ぎ物が少ないんじゃない?そろそろ新しい“家畜”が欲しいところよ?』


タムルは香木が採れる密林に巣くうゲリラの一員であり、“家畜”の運搬と世話係をしている人物である。
そしてサロトも実は、そのゲリラ達の一員であった。


命の保証の無い密林からしか香木は採れない。

そんな危険を省みないで密林に入り込む木材業者も居たが、誰一人として帰ってきた者は居なかった。
皆、毒虫やゲリラ達に殺されてしまっていたのだ。
そこにサロトが仲介業者として木材業者達に売り込み、法外な値付けで売り渡していたのだった。

踏み込めば死しかない密林にある“お宝”が欲しいとなれば、サロトは実に重宝な存在だった。
その値付けに不満を持ったとしても、サロト以外に頼れる者はおらず、身の安全が保証されたままの売買は、何物にも代えがたい魅力であった。

ゲリラ達の狙いもそこにあった。

完全な殿様商売で、タダも同然の香木は金(ゴールド)にも勝る儲けを生み出し、その高価値は更なる希少価値をも付加させる結果となっていった。
そして、更に金に糸目をつけない顧客達の嗜好品となり、木材業者達は、その儲けの為にサロトの元へと足しげく通う。

サロトの財力はゲリラ達の財力であり、ゲリラのリーダーは自分の顔を下界に知られぬままに懐を温められる。

前・専務はサロトが無類の女好きで、しかも異常性欲者だと直ぐに見抜き、そこに目を付け、サロトに女を進呈する事で値付けを下げさせ、自分達の儲けを増やす事を思いついた。
サロトもそうだが、ゲリラ達も人も通わぬ密林では女は不足するだろうし、だからといって、まさか街から略奪する訳にも行くまい。
そこで女の密輸を前・専務は請け負い、互いの利益は完全に一致して今までに至る……。




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