投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

『STRIKE!!』の最初へ 『STRIKE!!』 947 『STRIKE!!』 949 『STRIKE!!』の最後へ

『SWING UP!!』第16話-33


「………」
「ん……」
 誠治が目を覚ましたとき、葵は既に起きていた。
「あおい……?」
「………」
 自分を覗きこんでいるその瞳には涙が浮かんでいて、頬も濡れていた。
「また、こわい夢を、見たのかい?」
「はい……あの夢を、見ました……」
 愛する弟が、目の前で躯になっている光景を思い出させる夢は、葵にとって最大の“悪夢”であり、その夢を見たとき葵は、程度の差こそあるものの、必ず錯乱状態を起こしてきた。それを何度も、誠治は宥めてきたのだ。
「葵……?」
 しかし、誠治の顔を覗き込んでいる葵は、涙を流してはいるものの、冷静さを保っていて、それは、今までありえなかった様子でもあった。
(そういえば……)
 いつのまにか、繋がっていた部分は離れており、射精した後とは思えないほど、誠治の股間は綺麗になっている。どうやら、その“悪夢”を見たはずの葵が、目を覚ました後、頬を涙で濡らしつつも、後始末をしてくれたらしい。
 つまり、起きたときから彼女は、ずっと冷静であったということだ。
(布団も、汚れていない……)
 これまで“おむつ”を何度も汚してきた“夜尿”だが、葵はそれをしていない。いつもそのきっかけとなっていた“悪夢”に、彼女の自律神経は、負けなかったのだとわかる。
(………)
 これが、必然によるものか、誠治には解らない。軽々しく“克服”したとはいえないし、油断もできないのだろうが、葵の中で、何か大きな“超克”の転機があったのは、間違いのないところだった。
「今、何時だろう……」
「朝の、5時です……」
「そう、か……」
 誠治は“前払い”で“朝帰りプラン(宿泊)”を選択していたから、チェックアウトの限界時間である8時までは、延長料金の心配は必要なかった。
 ただし、和風の旅館を思わせる部屋なので、勘違いをしそうになるが、朝食の準備ができたことなどを告げに来る仲居さんは来ないから、時間調整は自己責任によらなければならない。
「ちょっと、お腹もすいたけど、ルームサービスはないしね」
「………」
「自分で連れてきておいて、ここが“ラブホテル”だって、忘れそうだったよ」
「誠治さん、たら……うふふ……」
 頬を濡らしていた葵だったが、誠治の軽口に反応して、優しげな微笑を浮かべてくれた。
(ああ、これが、葵の、本当の笑顔、なんだろうな……)
 美しい、と、誠治は心の底から思った。そして、そんな微笑を見せてくれた葵の心情が、とても、誠治には嬉しく思った。より深い場所で、葵が心を開いてくれたのだと、わかったから…。
「あっ」
「ん?」
 ふと、葵が、何かを見つけたらしく、照れたように俯いた。
「せ、誠治さんのが、元気になってます……」
「おや」
 帯をしていないがために、誠治が身に着けている浴衣は、前部がまるごと開帳されていて、誠治の腰から伸びる“巨身”は、剥き出しのまま反り上がっていた。…葵は、それを見ていたのだ。
(そういえば、葵と“一回”しかしていない)
 放出そのものは、浴室での“イラマチオ(口内性交)”を含めれば二回だが、葵と結びついてその中で果てたのは、確かに“一回”しかない。
「それに、ホテルに来て、肝心の“寝床”を使わないなんて、もったいないこともないな」
「あっ……」
 だから誠治は、葵を、身体の下に組み敷いていた。肩を優しく抱き、そのまま身体を反転するように、押し倒していたのである。
 葵の、“二度目”を期待している瞳が、とても扇情的であった。乱れた浴衣とあわせて、溢れる色気は止め処なく、誠治は煽られるまま、組み敷いた葵に覆いかぶさり、頬を寄せた。
「葵、愛してるよ……」
「あ、誠治……ん……」
 葵の唇を塞ぎ、濡れていた頬と、艶のある髪を何度も撫でる。猫のように喉を鳴らしてそれを受け止めてくれる葵が、とても愛おしい。
「ん……んん……誠治、さん……」
「葵……ん……」
 深く浅く、戯れるように、それでいて、慈しみあうように、唇を何度も触れ合う、誠治と葵。心の繋がりを、もっとも感じられるという接吻によって、身体の中の熱気を二人は、盛り上げているようだった。


『STRIKE!!』の最初へ 『STRIKE!!』 947 『STRIKE!!』 949 『STRIKE!!』の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前