王の奪還X-1
「あんたがあのねぇちゃん探し出せ」
蒼牙のいう"ねぇちゃん"とは曄子のことだ。彼女のことが葵の自由を奪う足枷となっている。
「私が二人を助けたいっ!!
ゼン様と約束したんです葵さんを守ると・・・!!」
足をとめた大和が秀悠を振り返った。
「葵はきっとあなたに助けを求めてはいない。だからこそ遠くの地へ飛ばされたのだと気付くべきだ」
「そ、それは・・・」
冷たく言い放った大和の言葉に秀悠は肩を落として俯いた。
「だーかーらー」
仲を取り持つように蒼牙がふたりの間に割って入った。
「葵を連れて行ったやつらは男で、しかも複数いるんだろ?ただの人間のあんたじゃ怪我どころじゃ済まないっつーの!葵のことは俺達に任せて、せめて曄子ってねぇちゃんの居場所だけでも突き止めておいてくれや!」
蒼牙は秀悠の背中を力強く叩くと大和に並走してその足取りを速めて行った。
「くれぐれも無理だけはするんじゃねーぞ!!」
静かな住宅街の夜に蒼牙の声が響いた。取り残された秀悠は近くに木に恩人ならぬ恩馬を繋ぎ声をかけると颯という名の俊足場は意図を悟ってか、その場に膝を折り体を落ち着けた。
「助かったよ颯。
私は今からやらなくてはいけないことがあるから、お前は少しここで待っていてくれるかい?」
ブルル・・・
賢い颯は軽く尻尾を揺らしつぶらな瞳で秀悠を見つめている。
「必ず迎えにくるからな」
そういって颯の頭をひと撫でするとふたりの神官が走り去ったほうへと駆けだした。