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美しき姦婦たち
【その他 官能小説】

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聖なる淫水(1)-3

(3)

 十日後、真希子から連絡があって、夏休みに入った翌日に彩香が上京することになった。坂崎は最寄りの駅の改札で待つように夕方の時間を指定した。
「改札って、一つだったかしら?」
「そう、駅に来ればわかるよ」
一度来ているのだが、記憶は曖昧のようだ。彩香は小さかったからなおさら憶えてはいないだろう。陽子が流産の傷心から立ち直りかけた頃、見舞いがてら子供を連れてやって来たことがある。
(そうだ、あの時……)
坂崎は忘れていたことを思い出した。

 騒々しいくらいの賑やかな食卓。我が家に子供の声が響いたのは初めてのことであった。
「お姉ちゃん、うるさくてごめん。これじゃお見舞いにならないね」
「いいのよ。ちっともうるさくない。楽しいわ」
その言葉に嘘はなかったと思う。陽子は子供の食べ散らかしをふき取りながら笑顔を見せていた。妹と二人の姪の訪問を素直に喜んでいた。

「真希ちゃん、もっといこう」
「いただきます」
ビールを注ぐと真希子はいくらでも飲んだ。陽子が体質的に飲めないので坂崎も相手が出来て調子にのってしまった。

 食事の片づけが終わる頃には酩酊状態になって、子供が眠くなってぐずっても世話もできないほど酔ってしまった。
「真希子、いい加減にしないと」
陽子が諫めてもまるで通じなかった。仕方なく陽子が子供を寝かしつけたのだ。

 やがて、さすがに限界に達したのか、突然立ち上がると、
「あたし、寝る……」
ふらふらと覚束ない足取りで隣室に入っていった。
 しばらくして襖が開いたのは陽子が風呂に入っている時である。
「だいじょうぶ?」
「喉渇いた……」
冷たい水をコップに入れて渡すと一息に飲み干した。
「飲みすぎたね、真希ちゃん」
「うん……おやすみなさい」
戻りかけた真希子はしな垂れかかるように坂崎に抱きついてきた。
「あぶないよ」
腰を支えると素早く真希子の唇が押しつけられた。
「おやすみなさい……」
するりと体を翻した。
(酔っていたのか、寝ぼけていたのか……)
翌朝はいつもの真希子に戻っていた。


 坂崎が駅に着いたのは約束より三十分近く遅れていた。予定外の仕事が舞い込んで処理に手間取ってしまったのである。
 改札の横に佇む彩香はすぐに分かった。待ち合わせをしていなくても目に留まるほど目立つ格好である。
 メイド服のようなスカートは白のフリルがついていて、少し前かがみになれば下着が見えてしまうほど極端なミニで、Tシャツは刺激的な濃いピンク色。胸には矢が貫いたハートの刺繍がしてある。長いネックレスを三つも首にかけ、さらに大きなバッグを肩に掛けている。
(田舎の子だな……)
東京に行くというので精一杯のおしゃれを決め込んだいで立ちに見える。

 ほほえましく思いながら、ふと気持ちの片隅に明らかなときめきが生まれていた。
(何という瑞々しさ、美しさだろう……)
伸びやかな輝くばかりの肢体。通りすがりの女子高生に目を奪われたことはあったが、今は若さと面と向かっている。

 坂崎は笑いながら近寄っていった。
「伯父さん!」
「ごめんごめん。ちょっと仕事が長引いちゃって」
「間違っちゃったかと思った」
「ごめん。お詫びに好きなものをご馳走するよ」
「やった。これ、持って」
肩のバッグを坂崎に押しつけた。
「一日持ってたら疲れちゃった」
数年ぶりだというのに畏まった遠慮というものが微塵もない。屈託のないのは子供の頃と変わらない。真希子譲りの性格だろうか。

 何でも好きなものをと言ったのに希望はファミレスであった。
「ファミレスなんていわきにもあるだろう」
「だって一番好きなんだもん」
十六歳の高校生にはそれがご馳走なのだろう。
 ハンバーグをたいらげ、さらにデザートのアイスクリームを坂崎の分まで美味しそうに食べた。

 今日、友達と行った渋谷の話をしながら口の休まらない彩香を見つめながら、彼は温かな気持ちになっていた。
(自分に子供がいたら……)
ふとそんなことを考えたのである。だがその一方で、気がつくと胸元や二の腕のきめ細かい肌に見とれている自分に戸惑っていた。

「渋谷で三人に声かけられちゃった」
「その恰好じゃそうだろう。いわきからその服で来たの?」
「うん」
「お母さん、何も言わなかった?」
「可愛いって」
「そうか。たしかに可愛い」
坂崎が笑うと、
「変かな、この服」
「変じゃないけど、スカート、短すぎるなあ。他に持って来なかったの?」
「ジーパン持ってきたけど」
「明日はそれにしなさい。その方がいいよ。彩香はスタイルがいいし」
「はい。そうします」
どう受け取ったのか、素直に返事をした。


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