記-11 さて、どうするかな──。 とりあえず、子どもが無事に生まれたことを、近親者に報告しなければならない。 新幹線が出発して間もなく、私は、ポケットの携帯電話を確かめると、すぐ後ろのデッキに向かった。 そうすることで、相席の彼女の警戒心が解ければいいという、そんな思いもあった。 偽善をリザーブしたまま、自動ドアをくぐる。 そのドアが閉ざされると、下心にも蓋をした。