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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』第15話-4


「あたし、楽しみが出来たなぁ」
「僕もだ」
「あの二人、きっと、ステキな“バッテリー”になるよね」
「ああ」
 練習が終わり、桜子と大和は、ともに“蓬莱亭”へ向かっている。桜子は当然“帰宅”するためだが、大和は“訪問”するために同じ場所を目指していた。大和が持っている荷物が大きめなのは、“泊まる”ことも視野に入れているからである。
 姉の由梨の妊娠から、それを慮った桜子の意向を受ける形で、大和のアパートでの“半同棲”を解消した二人だが、由梨の体調が落ち着き、その由梨自身が“もう大丈夫だから、遠慮しないでね”と、桜子に言ってくれたのを受けて、大和は“蓬莱亭”の桜子の部屋に、泊りがけで訪れることが頻繁になっていた。
「ただいまぁ」
「こんにちは」
「お帰りなさい、お嬢、大和君!」
「こんばんは〜」
「こんばんわぁ」
「ばんわぁ」
 今日は定休日であるため、店内の灯りはついていたが、暖簾は内側にしまわれていた。店の中では、雇われ料理人の務が厨房に立ち、まかないに腕を揮っている最中で、細君の美野里と二人の娘たちが、カウンターに腰を下ろして出来上がる料理を待っていた。
 務が“蓬莱亭”の厨房に立つようになって、数ヶ月が経っている。当初は限定的だったメニューも、日々の鍛錬の甲斐あって、ほぼ全てのレシピを、務は習得していた。それでも、まだ未熟と感じるメニューに関して、定休日等を利用して、時間と食材が許す限り、今日のように習練に励んでいた。
「お嬢、大和君、今日は何にしましょうか?」
 厨房で中華鍋を豪快に振りながら、務が訊く。
「大和、なにがいい?」
「あんかけチャーハンがいいな」
「じゃあ、あたしも、それにする」
「合点承知!」
 務の鍋を振る動きに、さらなる気合が篭もった。
「務さん、あたしたち、荷物、部屋に置いてくるね」
「ラジャー!」
 カウンターで今か今かと料理の出来上がりを待つ三人と、少しやり取りをしてから、桜子と大和は、二階に上がり、桜子の部屋に荷物を置きに行くことにした。
「おお、二人とも、帰ったんか」
「ただいま、お兄ちゃん」
「こんばんは」
 丁度、“居間”として使用している部屋から、龍介が、空になった皿などを載せた盆を両手に出てきたところだった。大和を見るなり、“いらっしゃい”と言わずに、“帰ったんか”と口にするようになっていたのは、二人揃って帰って来るところを、何度も出迎えてきたからに他ならない。それほど、大和はこの“蓬莱亭”に馴染みきっている。
「お姉ちゃんは?」
「いま、メシが終わったところやから、居間でのんびりしとるよ」
「……あの、お兄ちゃん、右手のお盆、まさかお姉ちゃんが全部?」
「その、まさかや」
「ひえぇ」
 龍介が右手に持っているお盆には、二食分の食器(中華定食用)が重ねられており、左手には天津飯の皿が乗っていることを考えれば、三食分の夕飯を二人で平らげたことになる。
 そして、食欲が旺盛になっている今の由梨を思えば、どちらがどちらを食したのかは、歴然としていた。
(つわりで弱ってたときの、反動なのかなぁ)
 とにかく、最近の由梨はよく食べる。それでいて、多少頬は丸くなったものの、大いに肥え太らないのは、食後のストレッチや、日々の散歩等、体をしっかり動かしているからだろう。


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