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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』第15話-5

「まあ、ちょっと、“アレ”がないのが、悩みらしいけどな」
 由梨は近頃、妊婦が須らく苦しまされるという、“お通じのなさ”だけが悩みの種だそうだ。
「それなのに、そんなに食べて、大丈夫なのかなぁ」
 別のもので、お腹が膨れ上がってしまうのではないかと、桜子は心配になってきた。
「明日は定期健診の日やからな。“相談する”いうてたわ」
「そっか。…それじゃあ、お兄ちゃん、あたしたち部屋に行くね」
「お邪魔します」
「おお。ゆっくりしていってな、大和君」
 廊下でそんなやり取りをしてから、桜子たちは部屋の中に入った。
 龍介の様子は普段と変わらないが、“大和の決意”を彼は由梨とともに既に聞かされている。当初は、桜子のことを慮ってか、さすがに重い雰囲気を持っていたが、当の桜子が全てを受け入れて、大和のことを応援する姿勢を持ち続けていたので、そんな妹の意思を支持するように、龍介も由梨も、将来の“婿殿”の決意を受容した。
「………」
 大和はその中で、龍介から個人的に頼まれたことがあった。
『機会があれば、ウチに来て欲しい。桜子と、一緒の時間を、たくさん過ごしてほしいんや。もちろん、ワイらともな』
 と、大和の状況如何では、今後は、長く離れ離れになることが必然であるため、義妹のことを思えば、どうしても龍介は、そう言わずにはおれなかった。
(本当に、この家はあったかい……)
 “決意”と言えば、耳あたりはいいが、自分勝手なことをしているのは間違いない。しかし、それと責めることをせずに、大和の意思を尊重しつつ、桜子を通じた“つながり”を保とうとしてくれる“蓬莱一家”の温もりを、大和は本当に、涙が出そうになるぐらい、尊いものに感じていた。
「航ちゃんと、結花ちゃん、仲良くやってる?」
 部屋に荷物を下ろし、身支度を簡単に整えて、再び店の中に桜子と大和は姿を表した。そのまま、カウンターにそろって腰を下ろすと、既に顔をほころばせて食事を始めていた二人の娘を横にして、美野里が話しかけてきた。
「仲良すぎて、見ているこっちが恥ずかしいくらいです」
 “ねえ?”と、桜子は大和に目配せをする。それを受け止めた大和は、“まったくだ”とばかりに、これ以上ないくらい肯定する深い頷きを、美野里に対して見せていた。
 いつか“バッテリー”を組むために、航は投手として、結花は捕手として、それぞれ鍛錬を重ねるようになっているのはもちろんだが、練習の終わった後にも、ペアになって素振りを繰り返し、ストレッチを行い、そして、手を繋いで帰っていくのを見れば、二人の仲の良さは、推して測る必要がないくらい、よくわかるというものである。
「あんかけチャーハン、おまちぃ!!」
 威勢のいい務の声と共に、桜子と大和の前には、熱々の中華あんが湯気を上げている、チャーハン皿が並べられた。
「「いただきます!」」
 同時に合掌の声をあげ、同時にメレンゲが動き、同時にそれを口に運んでいく、桜子と大和。示し合わせたわけではないのに、自然とそういう“合ったリズム”になっているのだろう。
「………」
 この二人も、本当に仲が良いと、美野里は頬を緩ませるのだった。


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