『SWING UP!!』第15話-17
「えっと……イク、のか……?」
「あ、あぅっ、あっ、そ、そうっ、あ、ああっ……!」
好きな相手に、“イク”瞬間を見られるかもしれないという恥じらいを、結花は忘れている。それぐらい、相手の指から与えられている刺激に、酔っているのだ。
「いいぞ、結花……」
女の子が絶頂に達する瞬間を、航は見たいと思った。それでも、興奮に腫れている結花の“クリ×リス(女チ×コ)”を指でまさぐる動きに、要らぬ力を加えなかったのは、彼が“紳士”であることを示している。腫れたところをむやみに触られるのは、男の身に置き換えても、“痛い”ことだ。
「やっ、あっ、わ、わたる、わたし、も、もう、イクッ……!」
びくり、と、腰がひとつ大きく跳ねた。それが、合図であった。
「あ、ぅっ、あ、イ、イッちゃうよぉっ………!!」
びくびくびく、と、太股にその痙攣が伝播していく。絶頂の際に起こる“電流”が、結花の身体に走っていることが、その反応で良く分かった。
「はぁ、はぁ、はぁっ……くっ……ん……は、はぁっ……!」
“クリ×リス(淫核)”からの直截的な性的絶頂なので、描いたグラフ曲線もまた乱高下が激しい。結花は、激しい硬直と弛緩を、短い時間の中で繰り返しながら、自分の中で炸裂した性の余韻を、白濁とした意識の中で愉しんでいた。
「は、ぁ……ふぅ……はふぅ……」
深い息をひとつついて、結花は脱力した。自慰の時と同じ余韻を感じながら、しかし、自慰の後にいつも感じる寂寞とした感傷はなかった。
「……わたる」
すぐ傍に、自慰の時にいつも夢想していた相手がいるからだ。
「わたし、イッちゃった……」
自分の性器を触られて、絶頂に至る姿を晒したことは、確かに恥ずかしいことだったが、それを凌駕する満足感が、結花の身体を隅々まで心地よさで包み込んでいた。
「結花、可愛かった」
「ふふ……エッチな、わたる……」
顔を覗き込んで来た航の後頭部に手を廻し、そのまま結花は、航の頭をもっと自分の傍に引き寄せた。
「ん……」
必然、唇は深く重なり合う。互いに性の高みに至る姿を晒しあったから、繋がりを求める行為に遠慮はなくなっていた。
「じゃあ……する?」
「ああ」
唇同士の浅く深い触れ合いを愉しんでから、性的接触の最終地点にたどり着かんとする意思を、互いに確認しあう。一度、絶頂を見せあったこともあるからか、不思議と“初めて”を目前にしながら、妙な落ち着きが二人にはあった。
「あ、でも、ゴム…」
「……ある」
「えっ」
結花が言うよりも先に、いつの間にか航は、その手に封切られる前の避妊用のゴム(コンドー氏)を手にしていた。
「……スケベ」
「な、なぜ、そうなる?」
「ヤル気、満々だったんじゃん」
準備が良すぎる航に対して、結花がそう言うのも無理はない。今日、航を誘ったのは明らかに“勢い”だったわけで、本来なら“避妊具(コンドーさん)”の準備は出来ていない可能性のほうが高いはずだった。
「“お守り”だったんだよ。法泉印大の、隼人先輩から預かってた……」
「ああ、あのときの……」
ぷっ、と、結花が吹き出した。
「な、なぜ、笑うかな?」
「航が、好きって、言ってくれたときのこと、思い出しちゃって……」
航が持つ“お守り”を受け取ったのは、まさに二人が“恋人同士”になったときと、全く同じ日時場所であった。
「あのとき、さ。航、いきなり抱き締めるもんだから、わたし、びっくりしたんだよ」
「……こんな、ふうに、だよな」
「あっ……」
そのときの再現をするように、航の腕の中に抱き締められた。
「航、すごい、ドキドキしてる……」
「そりゃあ、するさ」
好きな女の子と、人生においても初めてとなる“セックス”をしようとしているのだから。
「わたしも、ドキドキしてるよ……」
「わかるよ」
慎ましやかな胸に手を当てなくても、結花の全身が鼓動を打つように、その血流を激しくしていることは、触れ合う肌の箇所から良く伝わってきていた。
「じゃあ……しよ?」
「ああ」
心も体も、二人は準備万端であった。
ちゅ…
と、その決意を表すかのように、軽く唇を重ね合わせてから、繋がるための体勢を整えることにした。