第三部-4
「やめて」という言葉すら、もはや発することはできない。
一刻も早くこの痛みと恐怖から逃れたい。
だが、逃れられるのは、「ある行為」を甘受した後だ。
寛美の中で、剛直が僅かに跳ね上がるような動きをした。
男の口から、小さく呻き声が漏れる。
その瞬間は近づいていた。
男は、寛美の黒い脚を両脇に挟み、ピストンを速めた。
腰から下を宙に浮かすように抱えられた寛美は
ベットの軋む音に呼応するように 短い嗚咽を続けた。
男の息遣いが荒くなった。
寛美の小さな胸に覆い被さるように、胸を合わせ
仕上げに入った。
首に手を廻し、唇を吸い上げる。
叫び続け、枯渇した口内に、舌をねじ込み、
寛美の舌を絡め取る。
涙が、寛美の目から溢れる。
寛美が、生まれて初めて、拳で人の胸や肩を叩いた。
細い腕での哀れな抵抗・・・。
皮肉なことに、この行為は、さらなる興奮の糧であった。
寛美が白目を剥いた。
剛直が、大きく跳ね上がると同時に
寛美の中で、大量の何かが飛び散った。
一度や二度では無い。
粘膜のすべてを覆い尽くされたと思うほどだった。
欲望の限りを吐き出したにもかかわらず、
男は、ピストンを続けた。
一秒でも長く、寛美を体感していたかった。
脱力している寛美の 歯の裏側までもを
しゃぶりつくした。
ようやく 剛直を抜いた時
赤く染まった粘液が滴り落ちた。
寛美は目を閉じたまま、動けない。
夢であってほしい・・夢に違いない
無理もない。
仕事を終え、プライバシーが約束されているはずの
ホテルでの悪夢・・・。
受け入れられるはずがない。
しかし、束の間の休息もそれまでだった。
獣は2人いるのだ。
しかも、あれだけ刺激的なショ―の間、
ずっと「おあずけ」を喰らっていたもう一人の男。
寛美の黒いつま先を掴み、男は口に含んだ。
寛美は、反射的にベットの隅に逃れ、身を固くした。
骨太の体は、いわゆるメタボで、頭髪も乏しい。
本来なら、寛美のような女性とは、全く無縁の存在だ。
薄気味悪い笑顔で、寛美に近づく。