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想いを言葉にかえられなくても
【学園物 官能小説】

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想いを言葉にかえられなくても《冬の旅‐春の夢》-3

こんな地味な女とは握手さえしてくれないかも。めちゃくちゃ格好良かった篭崎龍奏と、並んで写真を撮られるのだから…こんな私はイヤだ。
…なんとか
…なんとかしなければ!
 思い立ったらすぐ行動するタイプな私。家に帰ると真っ直ぐに自分の部屋に行き、机の引き出しの一番上、鍵を開けて中から銀行のカードと通帳を取り出す。何かあったら使おうと心に決めて、ずっと貯金していた。
 今使わなければ…残高を確認してカードを財布にしまい家を出た。
 目指すは…
………………
「ありがとうございましたぁ〜」
 にこやかな笑顔を背に店を出た。初めて着けるコンタクトレンズ。世界が明るく見える。こんなに軽くて鮮明に見えるなんて。
 ブティックを梯子し、両手には紙袋がぶら下がった。こんなに買い物したのは初めてでまだドキドキしてる。
 このまま電車に乗ろうと思ったが、ふと駅前の美容室に目が行った。
 髪…どうしよう。
 いつものポニーテールは髪の量が多いし、重い。黒くて艶は良いのに。少し軽くしてもらおうかな。お金もまだ余裕だ。
 …ドキドキしながら美容室のドアを開いた。
………………
 ガサッガッ…がっ…
 紙袋が走る度に音を立てる。みんなが見ている気がする。黒髪が風に揺れていて、いつもの後ろに引っ張られている感じがない。
「はぁ…はぁ…はぁ」
 家に着き、自室に入った時は息も切れ切れだった。軽く脇腹も痛い。
 母親も妹もリビングで談笑していたので、私の急ぎ様に驚いていたが、私の変容を見てはいないだろう。見ていたら…五月蠅いくらい騒ぎ立てるのだ。
 クローゼットの扉を開ける。紙袋をベッドの上に置き、目を閉じて息を整える。高鳴る胸が苦しい。そうっと、瞼を開けクローゼットの扉の裏側にある全身が映る鏡を…見た。
 やっぱり…美容室で見ていた顔だ。嘘では無かったのだ…十八年生きて来て初めてで…嘘だと…思ってたけど……
『可愛い…』
って…私の事だったんだ。
………………
 美容室に入ったは良いが自分が場違いだった様に思えて逃げ出したくなった。
 鏡や照明がキラキラしていて、スッピンでポニーテールで紙袋を両手に下げている私は、恥ずかしくて情けなくて逃げ出したかった。
 …だけど
「いらっしゃいませ!ご来店は初めてですか?」
 と、捕まってしまいシャンプーをされ鏡の前に座らされた。
 ポニーテールを下ろした髪は座っているお尻を隠すほど長かった。湿っているものの、量が多く厚いので野暮ったい。
「お客様は髪が長いですねぇ。ここまで伸すのも大変だったでしょう。今日はどうしますか?長さ変えますか?」
 鏡越しに見られ、恥ずかしくてうつむいてしまう。
「あの…長さは変えたくなくて…」
「じゃあ少し梳きましょう。量を軽くして、縛らなくてもまとまる髪なんていかがですか?」
「あ、お願いします。」
「はい、かしこまりました。」
 軽快なハサミの音をBGMに美容師さんは気軽に話しかけて来る。人見知りの激しい私は曖昧な返事を返すばかりだった。
「前髪も長いですねぇ。折角ですから切ってみましょうか?」
「はい」
「私としては、左右どちらかに分け目を作った方が似合うと思うのですが」
「あ、お任せします」
 こんな感じで美容師さんに任せっきりのまま、眉の形や産毛の処理、ナチュラルメイクまでしてもらった。
「ねっ、どうです?かわいいでしょ?」
 鏡越しの私は驚く程変わっていた。


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