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想いを言葉にかえられなくても
【学園物 官能小説】

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想いを言葉にかえられなくても《冬の旅‐春の夢》-12

「ふぅん。秋田恭介も大変だな。」
「え…なんで恭介くんって」
 二人の関係は、かなり内密なのに…
「恭介も吹奏楽部だ。見てれば解る。それに…」
 空のお弁当箱を包み返しながら言う。
「あいつらたまに音楽室で励んでるから。…おい、んな紅くなるなって」
 指摘を受けた通り真っ赤だ。あの二人…
「っおい、紫乃。」
「ひゃっ、い?」
 妄想してたら声が裏返ってしまった。
「同棲したい?」
 直球ど真ん中、ストレート。相変わらずなんだから…。……って
「同棲?!」
「ああ。」
 同棲って…確かに千鶴を羨ましがったけど……同棲って…
「それとも、結婚する?」
「…っあの…。」
 なかなか返事が出来ないでいると、唇が被さってきた。
………………
「結婚……」
 自宅までいつもの様に送ってもらって、自室のベッドに腰掛ける。
「結婚かぁ…」
「おねぇちゃん結婚すんの!?」
 ノックもせず入って来る妹、桃華(モモカ)。
「さぁね。これから大学よ?する可能性は1%未満」
 ぶぅたれながら、ベッドに寝転ぶ桃華。丈の短いロングTシャツにジャージを履いている。今時の女子高生そのものだ。
「おねぇちゃん、最近キレイになったから…もしやと思ってたんだけどなぁ。」
「キレイに、ねぇ…」
「嘘じゃないよ!表情も柔らかくなったし。コンタクトのせいもあるよね」
 そう、龍二との逢瀬の帰りはいつもコンタクト。キスしやすいからって単純な理由だけど。
「桃華は結婚したい?」
「したいよ!今すぐしたい!」
 身を乗り出して意気込む桃華に苦笑する。ここまで正直に生きれたらどんなに良いだろうか…なんて考えてみる。全てを放り投げて想いのままに……。
「おねぇちゃん、窮屈そう。もっと自分を出しても良いんじゃない?」
「……」
 窮屈そう…か。
「好きな人、出来たんでしょ?最近キレイになったのも、帰り遅いのもそうなんでしょ?」
「桃華には、かなわないなぁ。」
 全くその通りだ。妹はよく見ているんだなぁ。
「結婚したって、大学行けるんだからね!」
「……!!」
 あははっ!笑いながらリビングに降りて行った。
 返す言葉も無く、ぼふっと枕に顔を埋めた。
 同棲…結婚……。きっと望んでるんだろうな、一緒に暮らす事を。
 だけど私は家族と言う殻に守られている。壊したくないから…一歩が踏み出せない。
 でも……
「…一緒に暮らしたいよぉ……」
 好きな人と四六時中いたい。朝も昼も夜も。たくさん知りたい。良い所も悪い所も、全部…。大学なんて行かないで、ずっと一緒に……。
……………
 三月一日。卒業式。私は意を決していた。
 あの時の返事はまだ返して無い。ずっと考えていた。龍二とのこれからの関係…二人の未来。
 龍二はあれから何も言わない。冗談だったのかも知れない。今更、意を決したって、恥ずかしい思いをするだけかも知れない。でも…決めたんだ。
 一歩踏み出してみるって。
「な、どうしたの?」
「おねぇちゃん、気合い入ってる…」
 朝、支度をして降りたら開口一番がこうだった。卒業式はリクルートスーツと言うのが橘高専の慣習になっている。
 先日、龍二に見立ててもらったスーツ。郊外まで遠出した初デート。只の黒いスーツじゃ面白くないから、細いストライプが入った物を選んでくれた。もちろんパンツは却下され、タイトスカート。シャツは開襟シャツ。黒いヒール8cmのローファー。


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