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想いを言葉にかえられなくても
【学園物 官能小説】

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想いを言葉にかえられなくても《冬の旅‐春の夢》-13

 首元がスースーするし、ストッキングが慣れない為に違和感を感じる。だけど、着替えてみて解った事がある。
 おしゃれって楽しいって事。鏡を目の前にして考えるなんて、龍二と出会わなければ有り得なかった。篭崎龍奏に会いに行った日の、気持ちの高ぶりと同じ。自分を見て欲しくて、努力する。髪型にしても、メイクにしても同じだと言う事が。
 コンタクトを着け、薄く口紅を引いて、髪は丁寧に梳いた。ヘアークリームで落ち着かせ、なびかせる。前髪を斜めに分けて、あの日の美容室後の自分に近付く。
「お母さん」
「え?あ…どうしたの?紫乃?」
 すうっと息を吸う。心臓は意外に落ち着いている様だ。
「私、結婚したい人がいるの。」
 しん…と静まり返った。新聞を読んでいた父も唖然としている。
「今は結婚前提に付き合っているけど、春から同棲します。行く行くは結婚します。」
 心のつっかえ棒が取れた感じ。安堵の溜め息が出る。まずは半歩と言う所だろうか。
「紫乃、いきなり…そんな……」
 明らかに動揺している母。無理も無いか。今まで一度も、男の人の話をした事が無かったから。だけど、意外だったのは…
「解った。紫乃がそこまで言うのは、自分の中で堅く決めた事だ。何を言っても曲げないんだろう?」
 父の言葉に首を縦に振る。
「そこまで言わせる男に会わなくてはな。娘を頼むんだ、筋は通したい。」
「………」
「紫乃、卒業おめでとう。」
「父さん…?」
「卒業まで待っていたんだろう?お前は俺に似て妙に真面目腐った所があるからな。ずっとレールの上を真面目に歩いて来たお前だ。俺は少し心配だったんだ。自分の道を歩いて欲しくてな、だから…俺は反対しないよ。なぁ、母さん」
 父の言葉に母もにっこりと私を見てる。胸を暖かいものが広がっていく。
「お父さん、お母さん…ありがとう」
 溢れそうになる暖かい涙を堪える。こんな月並みな言葉しか出て来なかったけど…感謝の気持ちで一杯だった。
………………
「卒業証書授与」
 壇上に一人ずつ上がり受け取って戻る。黒髪をなびかせて歩く。周りの視線が以前は怖かったが、今は気にならない。それより気になるのが‘山形先生’の視線だ。先生なのに、二人の時の様な視線を送ってる。妙に意識してしまう。自分が裸で歩いている様な感じ。
「なぁ、高橋。どうしたんだよ。お前、美人だったんだな」
 クラスメイトとの談笑。式は終わり、銘々に両親と帰宅をしたり、友達と最後の別れを惜しんだり、教室内は騒々しかった。
「本当、紫乃ったら…いきなり変身しちゃうんだもの。あ〜、ショックだなぁ。一体、最近何が起ったのかしら」
「千鶴…」
「嘘、嘘。冗談よ。ショックじゃないわ。逆に嬉しいくらいよ。紫乃に幸せ、来たみたいだもんね!」
 騒々しい中で不意に視線を感じた。窓から見える正面の校舎…その一画にある化学室。カーテンを閉めながら……見てる。
「紫乃!?」
 思うより早く走っていた。龍二に会いたい。体育館で見詰め合ったけれど全然足りない。声が聴きたい。ねぇ…貴方の見立てたスーツはどう?あの時と同じ様に、貴方にみて欲しくて頑張ったよ。私、私……!
 ―ガラガラガラッ!
「紫乃?あれ?教室に居たんじゃなかったのか?」
「っは、はぁ、はぁ…龍二……っ。私と…」
 心臓がばくばくする。これはもう、走ってきただけじゃない。意を決したんだ…言わなきゃ……一歩、踏み出してみるって決めたんだ…!
「……結婚して」
言ってしまった。沈黙が苦しい。
 なんだか怖い。龍二の一挙一動がこんなに怖いなんて。
「勢いとかじゃない?」


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