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想いを言葉にかえられなくても
【学園物 官能小説】

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想いを言葉にかえられなくても《冬の旅‐春の夢》-11

「ほら、携帯かせ。」
「え?あっ…」
 着信履歴を開き、再送する…って自宅に!?
「ちょ、龍二っ!」
「しーっ。あ、もしもし。私、橘高専の山形と申します。……はい、ええ。夜分遅くに申し訳ありません。」
 受話器の向こう側からは微かにお母さんの声が聞こえる。
「ええ、そうなんです。ええ……済みませんでした。早く連絡したかったのですが……ええ。はい、……あ、大丈夫です。責任を持って送りますから。はい…………失礼します。では」
 ふぅ、と一呼吸置いたのを確認して声を掛ける。
「何、話してたのですか?」
「ん、高橋紫乃は具合が悪くて保健室で休んでた。残業の終わった俺が送っていく。そう言う事」 さらりと言い放って淡々と服を着ている。慌ててそれに従い、衣類を身に纏った。……なのだが。
「うわっ、っう…」
 ベッドを降りた所で足がおぼつかない事に気付いた。情時のせいだろうか、太股や膝に力が入らない。
「大丈夫か?…やりすぎたか?」
「真顔でそんな事言わないで下さい。っと、よたつくけど多分大丈夫です」
 ふらつく足下に注意して歩く。玄関を出てエレベーターに乗り、駐車場に着く。黒いスポーツカーに乗り込み、溜め息を漏らす。

 胸が痛い。

 両親に叱られた覚えが余り無いのでハラハラするから?いや、違う。これはきっと…
「大丈夫。俺が上手いように言うから。………?紫乃?」
「私、胸が痛いんです」
「大丈夫だって。んな心配しなくても。」
「違うんです。私、龍二と別れたくないんです。ずっと一緒に居たくて、胸が苦しいんです」
 しがみついた胸元は、先生である証拠にネクタイが結ばれていた。
「可愛い事言うなよ。帰したくないのは……俺もだ。」
 ギュッと抱き締められる。甘い匂い。香水かな?今度聞いてみよう…
「紫乃………」
 結び付いてしまった気持ちと身体。このまま…抱き締めあったまま…一つになりたい。
「帰ろう。」
 名残惜しそうに身体を離し、エンジンを掛ける。なるべく遠回りをしながら家路に着いた。
………………
「そう言えば、夏頃に婚約がどうだとかって、話題になってましたよね」
 ぶふっ…!飲みかけの珈琲をむせらせた龍二。明らかに虚を突いてしまったみたい。
 お昼時、化学準備室でお弁当を食べる。かれこれあの時…十二月から、すでに二ヶ月。二人で過ごす当たり前の時間。
「んで…急に?んな話を」
「いや、そう言えばそんな事もあったなぁって思い出して。」
「ふぅ…あれは冗談。見合いは事実だけど、その日に断ったくらいだし。何、ヤキモチ?」
 愉快そうに口許を歪ませる。正直、ちょっと疑ってたけど。これは秘密にしておこう。
「そんなんじゃありません。あぁ〜あ、暇だなぁ」
 そう、暇なのだ。二月前に推薦入試は終わり結果は見事合格。なんとなく選んだ大学、燃えるものも無い。
―ピロリロリン♪
 携帯からメール着信の音。これは千鶴だな…
『sub:千鶴だよ
やっほ。携帯変えたの♪アド登録宜しくね。
あと、引っ越しました。住所は…』
「どうした?浮かない顔して」
 携帯を覗き込む私、そんなに浮かない顔してたかなぁ
「いや、千鶴は幸せ絶頂期だなぁって思って」
「部長が?」
 部長…そう言えば吹奏楽繋がりだったっけ、この二人。
「ええ。同棲始めるそうです」
 千鶴、名前は言って無いから許してね。そっと胸の中で言ってみる。


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