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翼の記憶
【ファンタジー 恋愛小説】

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誤解U-1

「秀悠さんもご無事だったようですし・・・何があったか教えていただきたいですね」






仙水の言葉には、わずかながら嫌味が含まれていた。行方の知れぬ二人が無事に姿を現し、葵だけが不明のままだからだ。






「そうだっ!!葵が見つかったんだ!!」






それまで黙って聞いていた九条が何か言いたげな表情で蒼牙へと詰め寄る。






「早く言わぬか・・・たわけ者め」






詰め寄られ先を急がされた蒼牙は、秀悠や曄子へと視線をうつすと





「じゃあな!
俺達は葵の元に行くぜ!!」





言い終わるか終らないかのうちに三人の神官は颯爽と駆け出し、蒼牙から経緯を説明されると町のほうへと消えて行った。





――――・・・






神楽と葵は数人の偽の神官たちにまわりを取り囲まれながら馬にまたがっていた。






「あなたについて調べさせていただいたと申し上げましたよね?とある村を火の海から救った話も、もちろん存じております」





ピクッと反応した葵の肩に優しく手を乗せる神楽。






「聖人として語り継がれている者の中に・・・大和という者がおりますね?」






ニヤリと葵の顔を覗き込む神楽は確信していた。先程"やまと"と口にしたときの葵は、どこかほっとしたような・・・彼女の張りつめていた空気のようなものが一瞬和んだからだ。






「本物の神官たちがあなたのまわりに集まりつつあるようですので、今夜のうちに移動させていただくことにします」






身を縮める葵は心の中で祈っていた。






(お願い皆・・・どうか私を探さないで・・・・)






そんなことを思っている葵の背後から苦しそうに咳き込む神楽が顔をしかめていた。






「・・・神楽さん?」






不思議そうに葵が振り返ると、わずかながら口元に血をにじませた神楽が荒く息をしている。






月の光に照らされた神楽の顔は青白く、葵に名を呼ばれ微笑むその顔には力がない。






「・・・あなたまさか・・・」






より一層激しく咳き込む神楽の体は、崩れ落ちるように馬から落ちてゆく。






まわりの者たちが手を差し伸べるより早く、葵が彼の体を受け止めた。






指先で神楽の前髪をかきわけて汗をぬぐってやると、葵は悲しげな眼差しで彼を見つめている。







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