Betula grossa〜出逢い〜-4
笑美ちゃんと初めて逢ったのは俺が中学の3年生の時だった。9月の中頃、部活を引退していた俺は補習をサボって公園の芝生の上で寝転がっていた。
「イヤ!止めて!」
公衆トイレの方から声がしたので覗いて見ると、女の子が4人の少年少女にいじめられているみたいだった。体の大きな少年が女の子を後ろから羽交い締めにしていて、女の子の足を少女が押さえいる。ブラウスの前がはだけられていてブラが見えていた。もう一人の少女が女の子のスカートの中に手を入れて下着を膝まで下ろして、その様子をもう一人の少年がデジカメで撮っていた。
「いいモノを見せてあげるよ!」
少女の手が女の子のスカートにかかった時
「お前らそこで何してるんだ!それ以上は洒落にならないぞ!」
俺は思わず叫んでいた。俺は正義感が強いわけではないが、このまま黙って見過ごすほど腐った人間でもなかった。
4人の視線が俺に集中した。
「なんだと!」
デジカメで撮っていた少年がこっちに向かってこようとはした。
「止めろ!その人は葛城さんだ!」
女の子を羽交い締めにしていた少年が手を離して言うと、4人は一瞬驚いて、慌てて逃げて行った。安心した女の子がトイレに座り込みそうになったので、慌てて女の子の体を支えた。
「ありがとうございます....」
女の子は俺の胸で声をあげて泣いた。
女の子が落ち着くのを待って
「少しは落ち着いた?」
出来るだけ優しく声をかけると
「ハイ!」
そう言って、ぎこちない笑顔を見せてくれた。
「これ....体育の時に使ったから汚れているかもしれないけど....」
俺はバッグの中からジャージを取り出して渡した。
「えっ?」
「その格好では外歩けないでしょ!」
ブラウスのボタンが弾け飛んでいて下着が見えている事に気付いた女の子は慌てて前を押さえた。俺は慌てて女の子に背を向けて、後ろ向きにジャージを差し出した。
「ありがとうございます。」
女の子はジャージを着て身なりを整えた。
「もう大丈夫です....」
振り返ると少し安心したような笑顔を浮かべる女の子がいた。
「送ろうか?」
「いえ....そこまでしていただくわけには....」
女の子は遠慮したが、体の震えが止まっていないようだったので、送る事にした。
「もうここで....あのアパートですから....」
「そう....じゃあここで....」
俺が帰ろうとすると
「あの....これ....」
「えっ?ああ....いつでもいいよ!返しにくいなら、別に返さなくてもいいよ!替えは持っているから!それじゃ!」
「ハイ!本当にありがとうございました!」
そう言って女の子と別れた。この女の子が笑美ちゃんだった。
「で..それからどうしたの?」
俺と笑美ちゃんの出逢いの話しを聞いていた梓さんは興味深そうに続きを求めてきた。
「えっ!?」
「まさか..それで終わりって事はないんだろう?笑美ちゃんとは学年が違うからずっと守る事は出来ない....だからどうしたのか聞いているんだよ!まさか....何もしてないんだったら、殴るぞ!」
梓さんは俺に拳を見せた。
「ったく....梓さんにはかなわないなぁ....」