Betula grossa〜出逢い〜-21
「お..お待ち下さい....私達は騙してなどおりません!」
「五月蝿い!しらばくれるな!」
龍神様は振り返り刀を振り下ろしてお純の帯を切り落とした。
「これでもこのわしを騙していないと言うのか!」
龍神様はお純を立たせた。お純の着物の前がはだけて、お純の体が見えた。お純の股間には男性特有のアレが見えた。
「!!!」
庄屋さん達は声も出せなかった。
「お主ら!生きて帰れると思うな!」
龍神様はお純を投げ捨て庄屋さん達の方に歩きだした。
「お待ち下さい!私達は騙してなどおりません!私は龍神様のお申し付け通りにここに来ました!」
お純が龍神様にすがりついた。
「ええい..離せ!汚れる!」
龍神様はお純を蹴り飛ばした。再び立ち上がりすがりつこうとしたお純に向かって龍神様は刀を振り下ろした。お純は前のめりに倒れ、真っ赤な血が流れ出ていた。お純の血が滴り落ちる刀を手に庄屋さん達を睨み付けて、歩きだそうとした龍神様の足首を瀕死の状態のお純が掴んだ。
「お....お待ち....下さい....私....」
「ええい!離せ!化け物が!」
龍神様はお純の背中から心臓へと刀を突き立てた。怒りを抑えきれなくなった龍神様は湖に向かって手招きをした。湖から巨大な蛇が顔を出していた。龍神様は蛇の頭に飛び乗ると
「お前ら全て食ってやる!」そう叫んだ。蛇が庄屋さん達に襲いかかった時
「私の名前を語る愚か者はお前か!」
空から声がした。
「だ..誰だ....」
龍神様が叫んだ。
「私が誰かわからないのか?ならば龍神の名前を語るな!」
空に龍が姿を現した。
「村人が水に困らぬように....謝礼として酒を要求する事ぐらいは大目に見てやったが....今日のは赦せぬ!」
龍が叫ぶとともに雷鳴が轟き雷がお純を撃った。雷の光に包まれたお純はゆっくりと立ち上がった。その後、お純の体はゆっくり浮かび上がった。
「この者は偶々心と体を違えて生まれて来たに過ぎぬ!それを化け物とは..どちらが化け物よ!」
龍は蛇に乗った男にそう言うと
「娘よ!私に手を貸してくれるなら望みを一つ叶えてやろう!」
お純は頷くと左手を上げた。お純の左手に弓が現れ、その弓を蛇に向けた。弓の弦を右手で引き右手を離した時、光の矢が放たれ、男諸共蛇の頭を貫いた。この世の物とは思えぬ叫び声をあげて蛇は湖に沈んでいった。蛇の最後を見届けて龍は姿を消した。龍が姿を消すと、お純はゆっくりと祭壇の横に降りてきた。お純を包んでいた光が消えるとその場に倒れた。庄屋さん達はじっとその様子を見ているだけだった。
「何があったのですか?」
集まって来た村人達に声をかけられるまで庄屋さん達は放心状態で、動かないお純を見つめていた。
「ああ....お前達も来たのか....」
「はい....龍神湖の方に雷が落ちたようなので....それに....」
庄屋さんは集まって来た村人達に今の出来事を説明した。村人達は信じられない....という顔をしていた....
「爺ちゃん!お純姉ちゃんは女だよ!母ちゃんと同じ体をしているもん!」
庄屋さんの幼い孫娘が倒れているお純を見ながら叫んだ。
「そんなバカな!」
庄屋さん達が確かめに行こうとすると
「待ちなされ!男衆は近づいちゃなんねぇ!」
村の長老の大婆様が口を開いた。
「男衆にお純の肌を見せるわけにいかねぇ!お純は命を賭してわしらを守ってくれたんじゃ!」
大婆様の声に庄屋さん達は立ち止まった。大婆様は歩いて行ってお純を見つめた。
「お純....すまぬ....このような姿で....お前も手伝っておくれ!」
大婆様と孫娘はお純の体についた血を拭き取っていった。それを見ていた女衆も二人を手伝った。血を拭き取って、着物を直してからお純を祭壇の上に寝かせた。
「お純....今宵はここで辛抱しておくれ....明日村に連れて帰るから....」
大婆様はお純にそう語りかけて祭壇を離れた。そして村人達と帰って行った。