Betula grossa〜出逢い〜-15
「どうかしたんですか?」
俺が尋ねると
「なんでもないよ!チッ!男のクセに....何で私より....」
香澄さんが不機嫌になった。
「どうした?香澄?まさか少年のほうが細かったのか?」
梓さんがからかうように言うと
「わかっているのか?梓?私より細いって事はお前より細いって事だぞ!」
「あっ!」
梓さんは初めて気づいたのか急に表情が暗くなった。
「チッ!まったく....」
香澄さんは梓さんに呆れたように舌打ちした後
「ほら!隣でこれに着替えろ!」
俺に紙袋を渡した。その中を見てみると、中には女性の下着が入っていた。
「なっ..何ですか?これは?」
俺が慌てて言うと
「知らないのか?ブラジャーと....」
香澄さんは平然と答えた。
「そっ..それはわかります!何で俺に....」
周りを見ると笑美ちゃんも姫川さんも変な目で俺を見ていた。梓さんは可笑しそうに笑っていた。
「わからないか?少年は今、誰が見たって美少女なんだ。そんな美少女が男物の下着を着けていたらマズいだろ!」
「しかし....」
俺が躊躇っていると
「しかしじゃない!少年は女性物の洋服を着るんだろ!当然スカートを履く事になるだろ!なんかの拍子に下着が見えちゃう事もある!その時男物の下着だったらマズいだろ!」
「そっ..そうですね....」
「ショーツを着ける前にTバックのサポーターを着けるんだぞ!」
「えっ?」
「少年はバカか?小さいショーツを着けていて、なんかの拍子で少年のモノがコンニチハしたらマズいだろ!」
「そっ..それもそうなんですが....俺が行かないっていう選択肢は....」
「ない!」
俺はうなだれて、紙袋の中から下着を取り出して眺めた。
「コラ!少年!マジマジと見つめるな!」
「どうしてですか?」
「それは私のだ!あっ!安心しろ!それは一度も着けた事のない新品だ!それからその下着は返す必要がないからな!」
「いや....こんなのもらっても....」
「いいから着替えて来い!あっ忘れてた!これをブラの中に入れとけよ!パットだ!」
「えっ!?」
俺が香澄さんを見ていると
「言っとくけど、それは私の物じゃないからな!」
香澄さんは胸を腕で隠しながら
「仕事上必要だから持っていたんだからな!別に小さいのはコンプレックスに思ってないから!」
「はい....」
「早くしろ!」
香澄さんに背中を押されるように部屋を出された。
「覗かないで下さいよ!」
俺はささやかな抵抗を試みたが
「誰が覗くか!」
香澄さんに蹴り飛ばされた。