Betula grossa〜出逢い〜-11
「何だこんな所にいたんだ!捜したよ!」
純君の声がした。
「あっ純兄ちゃん!」
笑美が純君の方に走って行った。
「急にいなくなったら心配するじゃないか!」
「へへへ....ゴメンなさい....」
笑美は舌を出して笑った。
「どれにするか決まった?」
「ウーン....迷っちゃって....純兄ちゃんに任せるよ!」
「せっかく梓さんが出してくれるんだから高いの買ったら?」
(おいおい少年!何を言いだすんだ?)
私が苦笑していると、純君は私の方をチラッと見て
「じゃあ親父が使ってたパソコンで、今使っていないのあるから、それでもいい?」
「えっいいの?」
「どうせ今使っていないからね!」
笑美はこっちを見て
「お姉ちゃん....」
どうしていいのか迷っているようだった。
「本当にいいのか?」
「はい!どうせ使ってませんから!じゃあ俺はルーターの会計を済ませてきます。」
純君はそう言って歩いて行った。
「オイ!少年!お金!」
純君は私の声が聞こえないのかそのまま歩いて行った。
「お待たせ!それじゃあ行こうか!」
純君が戻って来た。
「少年!いくらだ?」
財布を出して払おうとすると
「いりませんよ梓さん!」
「そんなわけにはいかないだろう....」
「いえ....親父達の引っ越しを手伝った時にその駄賃だって向こうで買い揃えた家電のポイントをもらったんです。そのポイントで買えましたから!」
「だからって....そんなわけには....」
「これは俺からの笑美ちゃんの引っ越し祝いって事で!」
「本当にいいのか?」
「はい気にしないで下さい!梓さんらしくない!」
「オイ!少年!それはどう言う意味かな?」
「ははは....ところで..さっきから気になってたんですけど....なんで姫川さんと親しく話してるんですか?」
「えっ?少年は美菜ちゃんを知っているのか?」
「はい!一応クラスメートですから....まぁ姫川さんはウチの学校でミスコンがあれば優勝間違いなしの美人ですから、俺の存在なんか知らないでしょうけど....」
「そっ..そんな事ありません!葛城君の事はちゃんと知ってます!」
美菜ちゃんは顔を真っ赤にしていた。
「良かったなぁ少年!美菜ちゃんに覚えてもらってて!」
私が純君の肩を叩くと
「本当に良かった!」
純君がそう言ったので
「葛城君....からかわないで下さい....」
真っ赤な顔で美菜ちゃんは答えていた。
「ねえねえ!美菜お姉ちゃん!これから何か用事ある?なかったら一緒にご飯食べようよ!お姉ちゃんのおごりだよ!」
「そうそう!笑美の言う通り!時間があるなら一緒にどう?」
「えっ?でも....お邪魔じゃ....」
「気にしないで一緒においで!少年もそれでいいだろう?」
「俺に断る理由なんてないよ!」
家電量販店を出たところで
「そういえば笑美は携帯どうしているんだ?」
そう尋ねると
「お父さんが亡くなって、解約したから今は持ってないけど....」
少し淋しそうにしたので
「パソコンを少年にもらったのでお金が浮いたから笑美の携帯を買いに行こうか?」
「えっ?いいよ!」
「笑美!昨日言ったろ!家族になったんだから遠慮はなしだって!」
「本当にいいの?」
上目使いで笑美に見られたら断る事は出来ないだろう。