第2話-3
ジュリは、喉元をクリクリと動かし「あー...あー...」と、声を出す、声色はシンと同じ感じになり、その状態で液晶パネルを開かない状態で電話に出る。
「もしもしオダですが...」
「こちらタナカコーポレーション株式会社です。朝早くからすみません、今日の夜中、そちらの車が急なスピードで走行したのを、こちらの監視モニタが捉えていました、何か周辺でおかしな事とか有りませんでしたでしょうか?」
明るく陽気な声で女性は話しかける。
「特に変わった様子はありません。車は電波障害による、一時的な支障が原因だと思われます」
「そうですか、付近で何かを見付けたとかは、ありませんですか?」
「ありませんでした」
ジュリは、相手がこちらを探って来ていると判断し、逆に追い返してやろうと考える。
「そちらは、今日夜中に、何か事故があったようですね。自分も帰宅してからウェブニュースを見て知りました。事故発生時には、トラックに何を積んでいたのでしょうか?今日公開されているニュースでは、物資は全て回収されたと、放送されていますが、付近を走行した者から言わせてもらうと、事故発生から数時間程度で回収出来る物にしては、随分と派手に検問とかやっていましたね。余程、世間には知られたくない何か重要な物が乗っていたのでは無いかと思われますね」
「え...あ...、そ、それは」
情報通信している女性は、戸惑いながら返答に迷った。
「聞いた話ですが、タナカコーポレーションって、女性型ラブドールの販売は、非公式にやっているようですね。それって一般的に考えて法に関わる事ではありませんか?」
「そ...それに関しては、べ...別問題です!」電話相手の女性の声が焦りに変わる。
「貴女、女性ですよね。自分の恋人が、そう言うアンドロイドに関わったとして、貴女は、どう思われますか?恋人が生身の人間よりも、人工で作られた人形に興味を持ったとして、貴女は嬉しいですかね?最近出ている情報だと、普通の人を相手にしているよりはラブドールを相手にしている方が、肉体関係や精神的にも安心出来る...って、言う男性増えて来ているみたいですね。最近彼、夜、貴女の相手してくれますか?まあ...そう言う製造業に関わる貴女自身、それなりに覚悟があるのでしょうけど...、どうしても夜寂しいのなら、自分が関わってあげても良いですけどね...バーチャルセックスや、玩具でオーガズムを得てばかりの日々じゃ、腰があまりに寂しいでしょう?」
「い...いい加減にして下さい!私は、そんな事聞いているのではありません!」
「おや...これは失礼しました。自分は憶測や、推測で物事を例えていただけですけどね...、ムキになって居るって事は発言の中に、的中する箇所があったのですか?失敬...。まあ...貴女も久しぶりにベッドの上で、生身の人に抱かれて、相手の指使いで腰から本気の蜜を、狂った様に吹き出させてくれないかな...なんて思っているのではないのですか?ちなみに自分の好みは、腰下に毛の無い、赤いランドセルを背負った...」
「もう、イヤー!」
ブツッっと、音を立てて電話が切れた。
電話が切れるとジュリは、フッと、軽く笑みを浮かべる。
電話担当していたルカは、震えながら自分が変に取り乱した事に涙を流しながら、両手で顔を伏せながら室内を出て行く。
「ちょ、ちょっと」
ミヤギが追いかけようとして、室内を出て周囲を見回すとルカの姿は見当たらなかった。
電話が終わる頃、マンションの部屋にシンが戻って来た。ジュリが固定電話の前に立っているのを見て「あれ?電話があったの?」と、シンが言うと。
「間違い電話だった見たい」
ジュリは笑みを浮かべながら答える。
「そうなんだ...」
シンは軽く頷く、そして室内に大きな荷物を押し入れる。
「よいしょ、それにしても...文明の発展て凄いね。ショッピングの物がわずか数時間足らずで届くなんて、本当...時代は便利化した物だと感じるよ」
今朝、注文したジュリ用の衣類や、栄養補給が全て届いたのであった。
「全て届いたのね。良かったわ」
「じゃあ...僕は、仕事に出かけるから、お留守番しといてね」
「あ...待って、私も出掛けるわ」
「出掛けるって、外に出て大丈夫なの?」
「大丈夫よ、待ってて、今から着替えるわ」
ジュリは届いた衣類の中から、気に入った物を選び取り、室内に行って着替えを始める。
ミヤギはルカの行方を探していると、女子トイレの洗面所で、水が流れている音に気付き、女子トイレを除くと、出入り口にある洗面所でルカが、口に右手を押し当てて吐き気を催していた。
「大丈夫か?」
ミヤギの声に気付いたルカは、顔色を青く染めていた。
「あ...はい、大丈夫です...うッ」
返事をしたルカはさらに嘔吐する。見ていたミヤギは、ルカの背中をさする。
「ウプ...」
腹の中に溜まっていた物が一気に吐き出され、そのまま力無くルカは倒れる。倒れた時に失禁を催し、床に大きな水溜りを浮かび上がらせた。
しばらくして、気分を落ち着かせたルカを彼は、屋上の風通しの良い場所へと連れて行く。腰にはタオルを掛けさせて置いた。
「気分を害して悪かった、しばらくの間は休むと良い」
「はい...」
彼女は、口元に布巾を押し当てていた。顔色は、まだ青ざめていた。
「協力ありがとう」
「あ...あの!」
ルカが呼び止めた。
「なにか?」